ただ、自然利子率は金融政策運営上重要な概念だが、観測されない値であり、ピンポイントで定めることはそもそも難しい。実際に、「均衡政策金利はFOMC参加者が想定する2.5%よりも高い」との見方は根強く、筆者は均衡政策金利が今後上昇する可能性がある、との考えを以前から示していた。
そして、アメリカのワイオミング州で8月24~26日に開かれるジャクソンホール会議では、自然利子率がテーマとして扱われるとの思惑が高まっている。これまでは自然利子率が下がったままなので、2.5%の均衡政策金利が債券市場において強く意識されていた。
ただ、そもそもピンポイントで自然利子率を考えることは難しいのだから、より幅広いレンジで均衡政策金利を考えるのが妥当である。この点を明示的にFRBが議論することは、今後利下げに転じた時に目指すアンカーとなる金利水準が不確定になることを意味する。
FRBは一部の経済学者の主張を取り入れた
こうした中で、ジャクソンホール会議を前に、NY連銀から8月9~10日に、自然利子率に関して時間軸を分けた分析が新たに発表された。NY連銀からは、先述のとおり自然利子率については、「幅広い試算値」が想定されることが示された。また「短期的な概念では自然利子率が最近上昇している」との分析が示されたのだが、これは均衡政策金利の水準を引き上げるべきとの判断を支持する。
FRBの今回の分析は、ジャクソンホール会議で自然利子率が上昇していると考える経済学者などの意見に対して、FRBがその一部を受け入れる考えを事前に示したと推察される。自然利子率を幅広く捉える、FRBの分析には相応に説得力があると筆者は考えている。
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