米国株市場は、8月以降、ややブレーキがかかっている。4~6月期の企業業績は、いわゆる大型ハイテク株を含めて、総じて事前の想定に沿った結果だった。7月までの株高が急ピッチだったため、過去の数字である決算は株高材料になりづらい。
アメリカの長期金利上昇をもたらす2つの重要な要因
だが、8月の米国株市場の足を引っ張っている最大の要因は、長期金利の上昇である。10年物国債金利は7月中旬まで3.7%台だったが、8月に入ってから4%台を突破すると、21日には一時4.35%と2007年11月以来の水準まで大きく上昇している。
一方、FRB(連邦準備制度理事会)の政策判断に影響するインフレ指標は、エネルギーと食料品を除いたコアベースのCPI(消費者物価指数)で明確な落ち着きが示された。FRBが注視している家賃以外のサービス価格も、過去4カ月にわたって低い伸びが続き、労働市場に起因するインフレ圧力は和らいでいる。
最近の長期金利上昇は、FRBによる追加利上げに対する思惑が主たる要因ではない。金利上昇のきっかけの1つは、国債発行金額が判明し需給が緩むとの疑念があったことだろう。
ただし、需給以外の2つの重要な要因が、長期金利上昇をもたらしているとみられる。
まずは、減速するアメリカ経済が後退に至らず底堅い成長が続く可能性が高まっていることだ。「FRBによる利下げが2023年内にも始まる」という多くの債券投資家の前提は、アメリカ経済が急失速には至らなければ、大きく揺らぐ。この見方の変化が、最近の長期金利上昇をもたらしたとみられる。
同国の10年物国債の金利は、2022年10月、2023年3月にも4%台に上昇したが、いずれもその後は3%台に低下した。「3月の一部銀行の破綻は長期金利の上昇が引き起こしたので、4%台の長期金利は持続しない」という声が、とくに債券市場で強まった。実際にはこの根拠は曖昧であり、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づいた判断ではなかったとみられる。
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