海水浴を知らずに育つ子も「体験格差」悲痛な実態 「学校外の体験=遊び」と思われ、支援進まず
母は家計を支えるため、夜勤もある福祉系の仕事に就いていた。忙しかった母親と過ごした記憶はほとんどない。「自分がやりたいことを言うことは、ワガママなんだと思っていた」と自らを抑えつけて生きてきた。
家族旅行もしたことがない。源さんにとって修学旅行が唯一の旅行経験だった。長期休みを利用して海外旅行をする家庭を見て「うらやましい」という感情にはならなかった。海水浴やキャンプ、旅行へ行く同級生をよそに、源さんにとって小学生の夏休みは学校のプール開放や学童がすべてだった。
中学・高校時代は「我慢し続けて勉強を頑張った」。貧困生活を抜け出すためには、「いい仕事につかないといけない、勉強を頑張るといい仕事につける、いい大学に行くしかない」と考え、努力を続けた。
国公立大に進学し働き始めたものの、幼少期のつらい経験を思い出し苦しくなることがあるという。休職しカウンセリングにかかることもあった。中学・高校時代を振り返り、「あのころが悔しい。もっと豊かに過ごせていたら精神的にも楽だった。子ども時代は人間形成に影響を及ぼすと思う」と語った。
足元の物価高が家計に重くのしかかる
「生活が苦しいのは自己責任と言われても仕方ない。だけど、子どもたちには何とか習い事をさせてあげたい」
子どもに習い事や旅行などの体験を十分にさせてあげられていないと苦しい胸の内を明かしてくれたのは、田代さん(仮名、40代)。高校生の長男と小学校高学年の長女がいる母子家庭だ。コロナ禍の真っただ中に3人暮らしとなったため、求職がうまくいかず、体調にも不安があることからパートで働いている。
児童手当などをあわせ月の収入は10万円ほど。食べ盛りの子どもたちの食費、月1GBに抑えているスマホの通信費、光熱費など住居費を払うと手元に残るのはほんのわずかだ。月々の出費以外にも教科書代や修学旅行などのお金も少しずつ貯めている。
金銭面でのゆとりがまったくない中でも、長女には、水泳と学童も兼ねて学習系の習い事をさせている。
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