海水浴を知らずに育つ子も「体験格差」悲痛な実態 「学校外の体験=遊び」と思われ、支援進まず
子どもの教育格差解消を目的に活動を行う公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」(CFC)の調査でも、世帯年収300万円未満の家庭が、子どもに体験をさせてあげられなかった理由として、経済的理由(56.3%)の次に多かったのが、送迎、付き添いなど保護者に時間的な余裕がない(51.5%)からだった。
CFC代表理事の今井悠介さんは、「子どもが例えば『ピアノをやりたい』と言っても行かすことができないとなると、子どもがそのうちやりたいことを言わなくなり、やってみたい気持ちに遠慮するようになる。意欲を削いだり、諦めたりすることが多くなり、自信をなくすことにもつながる。だからこそ体験にも支援が必要だ」と指摘する。
体験の場を担っていた「地域活動」が減少
源さんも、田代さんも決して特殊な例ではない。CFCの調査によると、世帯年収が300万円未満の家庭の子どもの約3人に1人(29.9%)が、直近1年間で学校外の体験をまったくしていないということがわかった。
また、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの学校外の体験活動にかける年間支出は、3万8363円と世帯年収600万円以上の家庭の10万6674円と比較して約2.7倍の差が出ている。
今井さんは、調査を行ううえで仮説は立てていたものの、「3人に1人がまったく経験がないというのは予想より多かった。体験格差というより体験の貧困だ」と言う。
さらに、世帯年収300万円未満で体験がないという子の家庭のうち、保護者が小学生のころに体験活動に参加してこなかった家庭は58.1%、体験があったという家庭は17.4%と、親自身もまた体験に参加してこなかった家庭が多い。また、小学校のころに学校外の体験がない保護者の割合は、世帯年収が300万円未満の家庭では30.5%、600万円以上の家庭では16.8%と世代間での連鎖も指摘されている。
加えて、子どもの体験の場となっていた「地域活動」の維持が難しくなっているという問題もある。少子化や共働きの増加などで、地域活動や子ども会は参加者や担い手が少なくなっているのだ。
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