海水浴を知らずに育つ子も「体験格差」悲痛な実態 「学校外の体験=遊び」と思われ、支援進まず

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こんな指摘をする人もいた。「学校選択制が取られているので、それぞれの学校に行ってしまうと意外と地域のつながりがなくなってしまう」。例えば、同じマンションに住んでいても、通う学校が違うと、登下校の時間が違うためになかなか会う機会がなく、地域活動に影響を与えているという。

子どもへの時間投資は小さいころのほうが効果的

キャンプや旅行といった一見すると、「遊びではないか?」と思うような体験は、子どもの認知能力(学力や考える力)や非認知能力(数値で計れない協調性など)に影響を与えることがわかってきている。

教育経済学が専門である慶応義塾大学総合政策学部の中室牧子教授は、

「子を持つ親が家計簿をつけるように1日の時間の使い方を記録した生活時間調査を使った研究が16カ国で行われている。

こうした調査を用いた実証研究では、親が子どもと過ごす時間を『投資』と捉え、『勉強』に対する時間投資と『体験』に対する時間投資の双方が、子どもの認知能力や非認知能力に影響することを明らかにしている。体験への投資は単なる遊びとはいえず、子どもたちの能力形成にとって重要な機会だ」と指摘する。

例えば、キャンプに行ったときに、どうやって火をおこそうか、テントを張ろうか。水族館に行って、あの大きな魚はなぜ速いスピードで泳げるのか、といったことを自分の頭で考える貴重な機会となる。

「子どもの幼少期に行われた時間投資は、言語発達への影響が大きいことを示した研究がある。例えばイギリスで行われた研究によれば、3歳時点で行われた親の時間投資は言語発達に影響を与え、それが5歳や7歳のときに認知能力をさらに伸ばすことの助けになっているという。

一方、アメリカのデータを用いた研究によれば、子どもが単独で決定権を持つ領域は10歳から14歳の間に約2倍に増加し、逆に親とともに意思決定をする領域は減少していく。子どもたちは大きくなるにつれ、自分自身でどのように時間を使うかについて主体的に意思決定をするようになっていくのだろう」(中室教授)

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