ispaceが宇宙事業挑戦で民間資金にこだわる訳 しがらみのなさはアドバンテージ、国へ要望も

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――宇宙先進国のアメリカでは、NASA(米航空宇宙局)に大きな国家予算がついています。

私の理解では、NASAはやはり高コスト構造になってしまっている。たしかに莫大な予算を持っているが、1つ1つのプログラムが相当高コストになってきていて、その結果、いろいろなことができなくなってきてしまっている。

外側(民間企業)を見れば結構新しい技術があって、宇宙技術も実はもうこなれてきているので、いまNASAがやっていることも、別にNASAがやらなくてもできるようになってきている。なので、外側にマーケットをつくって、NASAが欲しいサービスは外から安く提供してもらう環境をつくったほうがいいのではないか、という方向に、徐々に考え方が変わってきているように見える。

アメリカ2社は取引に制約がある

――月面輸送の事業でispaceと競合する、アメリカの民間企業のアストロボティック・テクノロジーやインテュイティブ・マシーンズには、NASAからのお金が多く入っています。

その2社はNASAの契約を主体に事業をしている。NASAは税金でやっているので、「地元のアメリカにお金を落としてほしい」「事業をアメリカでやってくれ」という国内からの要望がどうしても強くなる。

加えて、アメリカの場合は輸出規制も厳しいので、なかなか海外の企業や国と取引するのが難しい状況にある。そうなると、グローバルでの案件をなかなか取れなくなる。

それに対し、われわれはグローバルに事業ができる。アメリカ向けの着陸船のシリーズもやっているが、アメリカ製品をあまり使わない着陸船も開発している。そういう部分でも、日本を含むアメリカ以外の国の政府の案件は取りやすい。そこが彼らとの一番の違いだろう。

アメリカ国外だと今、実は(月面輸送を手掛ける)他のプレイヤーがいないので、アメリカ以外の政府や企業はispaceに頼らざるをえなくなる。

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