「奨学金337万円」養護施設で育った32歳彼女の今 父の暴力、離婚…「中卒就職」を逃れた先の人生

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ただ、木下さんは中学校の途中まで義務教育を受ける機会がなかったため、授業についていくのが精一杯。養護施設には中学卒業後就職か、高校進学かの慣習があったが、木下さんに関しては両親から「6人きょうだいの長女なのだから、中学を卒業したら働いてお金を入れてほしい」と言われていた。

「でも、中卒で働くのは絶対に嫌だったので、3年生のときに『どうすれば大学まで進学できるのか?』という計画を立てました。そのときに、施設の先生が奨学金について教えてくれたんです。

第二種奨学金(有利子)は誰でも借りられますが、第一種奨学金(無利子)だけを借りようと思い、1ランク下の公立高校に進学して学年トップの評定平均4.5をキープさせました」

第一種奨学金(無利子)は、高校での成績が採用条件のひとつになる。難関校に行ったために、第二種しか借りられなかった……というケースは意外と多いので、賢明な判断だったといえよう。

高校の授業料や入学金は養護施設が負担してくれたが(その分、私立は受けられない)、サポートは高校卒業までしか受けられなかった。そこで、木下さんは高校3年間、勉強とアルバイトに励んだ。

「友達と遊ぶよりもバイトで稼いでお金を貯めるほうが楽しかったんですよね。期末テストや中間テストのときも、前日にバイトのシフトを入れてオールで勉強して、翌日テスト受けたあとに、またバイトに行きました」

そんな生活を3年間送り、木下さんは高校の推薦枠を利用して、都内の私立大学に合格した。

大学進学をきっかけに奨学金を借りた

かくして、大学入学が決まった木下さん。激動のときを過ごした養護施設を出て、ひとり暮らしを始めた。

「施設の先生に部屋決めと引っ越しを助けてもらいました。最初はひとりでテレビを見られる楽しさや、好きな時間に洗濯ができる楽しさを堪能していましたが、1週間もすると少しだけひとりということが寂しくなりましたね」

そして、第一種奨学金(無利子)を毎月満額の6万4000円借りることになった。4年間で約307万円だ。さらに、入学金に充てるために第二種奨学金(有利子)を30万円、合計で337万円を借りた。機関保証ではなく、母親と弟に保証人になってもらった。

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