私たちは出口のないトンネルの中で、後ろの扉を閉ざされて手探りで歩いている。この気持ちがわかるか--東電幹部・飯舘村説明会での一問一答

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 いま、飯舘村の土壌、田圃で7000ベクレルから1万5000ベクレル。畑で2万2000ベクレル。驚異的な数字が出ている。そこから、作れる牧草が果たして、300ベクレルまで下がる当てがあるか。これは、苦渋の決断をせざるを得ない。そういう結果に、みんなで涙を流しながら、話し合ったのだ。あなたたちに、この私たちの気持ちがわかるか。

補償、補償、言葉だけでは、いくらでも言える。しかし、その先が見えない。私たちは出口のない真っ暗なトンネルの中で、後ろの扉を閉ざされて、手探りで歩いているのだ。この気持ちがあなたがたはわかるか。

とにかく、畜産農家の悲痛な思いを強く受け止めて、補償のさらなる一歩を大至急、見いだしてもらいたい。その点、よろしくお願いしたい。

東電 悲痛な思いをひしひしと感じた。とにかく、早くやれという言葉なので、考えたいと思います。

質問者19(男性) 今回の事故について、人災か天災か。この村がもとに戻るまで何年かかると思うか。

東電(鼓) 答えはむずかしいが、誰に責任があるのかというのが主旨だと思う。個人的には、人災ではないかと思っている。(拍手)
感覚で申し訳ないが、1年かなと思っている。

(会場から えーなど、大きなざわめき)

質問者19 なぜ、こんな質問をしたのか。東電社員の中に、この事故が地震によるものだという気持ちが少しでもあれば、それは間違いだと思うからだ。事故、その後の処理にしても、人災なのだ。天災ではない。

帰村しても、2年や3年では元に戻らない。酪農家がまた牛を飼って、牛の乳を搾れるようになり、子牛を育てて売れるようになるまで3年、4年はかかる。米作りも同じだ。たとえ、作っても風評被害で売れるかどうかもわからない。5年、10年という長い期間で、われわれは失業しているのと同じだ。5年、10年という期間で年収補償してもらわなければ、村は立ち上がれない。

健康を崩すなど2次災害、それに耐えられなくなって、首をつる、自殺をするという3次災害を出したくない。

個人への補償も十分にやってもらう。しかし、村を立ち上げるには行政にもお金が必要だ。あなたたちの第1、第2原発には、この四十年間、莫大なお金が下りていたはずだ。簡単に計算しても7000億円のお金が下りたと報じた週刊誌もある。

われわれの村を立ち上げるために行政にも100億円単位のお金を下ろしてもらいたい。そうしないと、村は立ち直れない。

それから、本日、ここに来て、「努力します」「審査会の指針にしたがって補償します」という回答だ。そんな回答は予想していた。なぜ、ここに、しっかりと回答できる最高責任者を連れてこないのか。

この村には1700戸数がある。もし、全員が来たら、この会場には入れなかった。最高責任者を連れてきて、各行政区で話をしてもらいたい。

東電(鼓) 本日は、夜遅くまでありがとうございました。たくさんのご意見をいただいた。明確に答えられないものもあった。しかし、みなさんのご意見をしっかりと重く受け止めていきたいと思う。まず、何が何でも事態を収束することが一番である。飯舘村のみなさんが少しでも早く、安心できるように、各方面のご支援、ご協力をいたきながら全力で取り組んでまいりたい。どうか、よろしくご理解をお願いします。本日はありがとうございました。
(浪川 攻 =東洋経済オンライン)

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