私たちは出口のないトンネルの中で、後ろの扉を閉ざされて手探りで歩いている。この気持ちがわかるか--東電幹部・飯舘村説明会での一問一答
東京電力福島第一原発の事故に伴って、政府から「計画的避難区域」に指定された福島県飯舘村。村民は、早ければ5月下旬にも村外への避難という政府要望を受けている。4月30日、そんな苦境にある飯舘村に、鼓紀男副社長ら、東京電力の幹部5名が補償金問題などの説明のために訪れた。
全体避難説明会の会場となった飯舘中学校の体育館には、村民の20%超に当たる約1300名が出席。東電側に補償金、放射線量のモニタリング、村の再生などに関する厳しい質問、意見が相次ぎ、19時に始まった会合は21時40分にまで及んだ。その中で、鼓副社長は、原発事故が天災か人災かを問われ、「個人的には」と前提を置いたものの、「人災だと思う」と答える場面もあった。このほか、東電側は、補償金支払いの迅速化などについて確約するとともに、村民から受けたその他の要望事項に関して、後日、回答することを明言した。
以下、東電側の確約事項と、村民が訴えた飯舘村の厳しい実情、質問の一部を紹介する。
質問者1(男性) 結果的に、私たちは、かなり放射線を浴びている。子供たちも内部被曝していると思う。内部被曝を数値化する機械はあるならば、飯舘に設置してほしい。私たちの健康について、これから5年後、10年後、証明できるかどうか、きちんとフォローしてもらいたい。
東電 内部被曝については、それを測定する専門の測定装置がある。具体的な名称はホールボディカウンターという。これは体の中に取り込んだ放射線物質から体の外に出てくる放射線を測定することによって、体の中に、どれだけの放射性物質が取り込まれていたかを測定する装置だ。ただ、たいへんに精密な測定器であり、かなり大きな特別な測定器である。発電所のなかでも全体で数台程度しかない。飯舘村に提供するかどうかは、会社に持ち帰って検討させてもらいたい。
紛争審査会のメンバーについては、政府のほうで任用されたものと思う。私どもは、先般、方針が出されたが、今後も、みんなが納得できる結論を早くしてもらうことを願うばかりである。理解をいただきたい。
質問者1 10年、20年後の私たちの健康をモニタリングするということを東電は願っているということでいいのか。
東電 (うなずく)
質問者2(男性) モニタリングしてこの村に降った放射能を点検すると言っているが、田んぼ、畑、山、全部にできるのか。山の土もすべて取って、放射能をなくすことはできるのか。そんなことはできないと私も、村のみんなもそう思っている。
それから、今日、なぜ、社長が来ないのか。会長でも来れるだろう。この村のみんなをバカにしているのか。私たちは、最も放射線が高いところに1カ月半もいる。これからも避難できずに、ここにいるのだ。そんなことを考えていないから、社長も会長もこないのか。バカにしないでほしい。
東電 放射線のモニタリグについては、これから、どのような形で、どのような場所で測定していくかを検討させてもらっているところだ。そのなかで、計画的避難区域という重要なところで、できるかぎりの測定させてもらうということで、いま、検討している。頂戴したご意見も含めて、詳細に検討する段階にある。申し訳ない。
東電 会長、社長については、かねがね、被災地域をすべて回りたいという意向は持っていると私はうかがっているが、本日、来れずに、本当に申し訳ない。私からお詫びする。この件については、帰社してから、社長、会長に伝える。