「水曜日のダウンタウン」が"希望の星"とされる訳 史上初の1億再生超が暗示するバラエティの未来

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一方、他のバラエティに目を向けると、グルメ、クイズ、カラオケ、生活情報、時事などの手堅く視聴率を稼ぐような企画が目白押し。いずれも面白さではなくマーケティングに基づいた企画であり、特に2010年代は視聴率の低下を止めるためにこれらに偏ったことで、「テレビは似た番組ばかりでつまらない」というイメージを与えていました。現在もその偏りは解消されていませんが、「水曜日のダウンタウン」が1億再生という圧倒的な支持を得たことでバラエティは純粋な面白さを追求する時代に回帰できるのか。大きな分岐点が訪れているのかもしれません。

その他でも、「CMをまたいで同じ映像を流さない」「意味ありげなあおり映像を繰り返し見せない」「キャスティングなどの忖度をしない」など現在の視聴者が嫌うことをしない制作姿勢も支持を集める理由の1つでしょう。これらは他のバラエティも「できるはずなのにやろうとしないこと」であり、その理由は主に「ビジネスとして目先の視聴率を獲らなければいけないから」と言われてきました。そんな状態が続いていただけに、「水曜日のダウンタウン」が今回のような形で脚光を浴びることは意義深いのです。

バラエティのライバルは何なのか

先日、東洋経済オンラインで 「ドラマ見逃し配信『○万回突破』が続出するウラ側」という記事を書きましたが、冒頭に挙げた今年1~3月期と4~6月期のTVer番組再生数ランキングの上位は、ほぼドラマで占められています。

バラエティは最上位の「水曜日のダウンタウン」でも1~3月期が10位、4~6月期が12位であり、ドラマとの差は歴然。バラエティはゴールデン・プライム帯の8割前後を占める民放各局の基幹コンテンツでありながら、「まだ配信ではあまり見てもらえていない」という課題を抱えているのです。

ドラマが配信でこれほど見てもらえるのは、「YouTubeやTikTokなどのSNSでは見られないコンテンツだから」であり、「ライバルはNetflixなどの有料動画配信サービス」などと言われています。ただ、両者には無料と有料という違いがあり、日本人はまだまだ無料を選ぶ傾向が強いだけに、現時点では切迫した状況には至っていません。

一方、バラエティが配信ではあまり見てもらえていないのは、「ライバルのYouTubeやTikTokなどのSNSに勝てていない」「アニメやアイドル関連などの推し活コンテンツも強力なライバルに浮上したから」などと言われています。

ゴールデン・プライム帯だけで100超のバラエティが放送されているだけに、これらをいかに「水曜日のダウンタウン」のように配信再生数を稼げる番組にしていけるのか。番組数の多さを考えると、その成否がテレビ業界の未来を左右していくでしょう。

さらにこれは裏を返せば、「バラエティが配信で見てもらえない状況が続いたらYouTubeやTikTokなどのSNSを筆頭にネットコンテンツの影響力がさらに高まっていく」ということ。だからこそ「水曜日のダウンタウン」はテレビ業界にとって希望の星であり、バラエティにかかわるテレビマンにとって目標とすべき重要な番組なのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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