「1人でも最期は自宅で」を叶えた男性2人のラスト がん末期の自宅療養死が「孤独死」ではない理由

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ペットを飼うことは、暮らしに張り合いを生んだり、ペットを通じた交流が広がるなどの良さもありますが、命を預かって飼うことは、一定の責任を伴います。

高齢でペットを飼う場合や、ペットを飼っていて病気になった場合は、自分で世話ができなくなったときにどうするかを考えておくことも責任の1つです。特に1人暮らしで、ペットのことで頼れる人が周りにいない場合には、ペットのこれからについても、なるべく元気なうちに考えておきましょう。

手伝いするのは難しいですが、天国にいる信一さんも、猫の行き先が決まって、きっと安心してくれたと思います。

食べたいものを食べたい

心不全を患っていた佐竹洋一さん(仮名・54歳)。治療のために入院していた病院を退院するタイミングから、私が在宅医として担当することになりました。

1人暮らしの洋一さんは、料理人として長く働いてきた経験があり、食べることと料理することが大好きな人でした。病気がわかってからも料理人の仕事を続けながら、塩分など食事制限があるなかで、自分で食べたいものをいろいろ工夫して作って、食べていたようです。時々、食べ過ぎたり、無理をして働き過ぎてしまうことで症状が悪化し、入院することになったようでした。

そんな洋一さんですから、入院中は食事に対するストレスが相当大きかったといいます。多くの人にとって、食事は楽しみの1つ。「食べたいものを食べたい」という欲求りはごく自然なものですが、入院生活となるとそれがなかなか叶えにくい現実があります。

洋一さんの場合には、「食べたいものが食べたいときに食べられない」というストレスに加え、「自分で料理ができない」ということも大きなストレスになっていたようでした。

入院生活から自宅に戻った洋一さんは、退院直後に餃子を50個作って食べたことをうれしそうに話してくれました。最初は10個だけのつもりが、また10個、また10個……と増え、気づけば50個をペロリと食べてしまっていたとか。それでも塩分を考えて、塩やしょうゆを控えた洋一さん仕様の餃子だといいます。

「やっと家に帰ってこられた」「やっぱり家がいい」と、ニコニコしながら話していた姿を思い出します。塩分に注意しなくてはいけない時期にもかかわらず、ファストフードの塩分過多なハンバーガーやフライドポテトを美味しそうに頬張っていたこともありました。

これは入院ではありえないことですが、余命が限られているなかで、本人がそうしたいと願うことなら、食べたいものを好きに食べることや、お酒やタバコを楽しむのもありだと私は思っています。

これは入院ではありえないことですが、余命が限られているなかで、本人がそうしたいと願うことなら、食べたいものを好きに食べることや、お酒やタバコを楽しむのもありだと私は思っています。

それによって病状が進むリスクや、症状がつらくなるリスクを十分に理解したうえでのことなら、望みを叶えるのも選択肢の1つだと思うのです。こういった選択の良し悪しには賛否両論あると思いますが、望めば選べるという意味では、自宅療養の自由がそこにあるともいえると思います。

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