ファンド連敗でも「ツルハ包囲網」が強まる必然 カギ握る「大株主イオン」創業家の苦難は続く

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一方、ウエルシアHDは全国に店舗網を広げているものの、北海道には2023年2月末時点で7店舗のみ。北海道地盤であるツルハHDは、2023年5月期末で同地域に425店舗を展開する。

経営統合で得られる仕入れ価格交渉力やPB開発等のシナジーは、強力な武器になる。これまでイオンは、ツルハHDの株を保有しながらも比率を引き上げるなど積極的に関与する動きはなかった。

ウエルシアHDはM&Aを含め2030年に売上高3兆円に到達する目標を掲げており、直近2023年2月期の売上高は1兆1442億円。規模拡大に向けて、いつ大型再編が起きてもおかしくなさそうだ。

クスリのアオキHDでもオアシス完敗

一方のオアシスも今後、イオンの動向に悩まされるのかもしれない。

オアシスは、北陸地盤で業界中堅のクスリのアオキHDへの保有比率を2023年5月15日時点で5.5%へ引き上げ、ツルハHD同様に創業家の経営体制にガバナンスの問題があるとして株主提案を行った。クスリのアオキHDにはイオンが9.9%、ツルハHDが5.1%出資している。ツルハHDを軸とした、オアシスの業界再編戦略に巻き込まれたと推測される。

だが8月17日に開催されたクスリのアオキHDの株主総会でも、オアシスは再び敗北。ツルハHDの時と同様、オアシス側の提案はすべて賛成率3割以下で否決され、現経営体制の続投が決まった。

クスリのアオキHDは創業家の持ち分比率が3割近くと高く、ツルハHDよりも守りが固い。さらにツルハHDとイオンが、オアシス陣営に回るとも考えにくく、株主提案を通す難易度は一段と高かったとみられる。

オアシスにとって都合のよいシナリオは、ツルハHDやクスリのアオキHDの株式をイオンに売却することだろう。しかし現時点でイオンは、慎重な姿勢を崩していない。

かねてツルハHDの鶴羽順社長は「他の小売業界は3社程度に集約されており、ドラッグストア業界もそうなることを覚悟して経営したい」と語ってきた。オアシスの株主提案に端を発し、大型の業界再編が動き出すのか。ツルハHDの株主総会が無事に終わっても、騒動に終わりは見えてこない。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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