ツルハ完全勝利を喜べない「株主イオン」の胸算用 ファンド提案否決でもドラッグ2位が迎えた転機

拡大
縮小

業界3位と4位では、メーカーや卸など取引条件を含めて接し方が変わってくる。ツルハの業界2位が盤石ではないどころか、4位転落のリスクを遠ざけるためには、さらなるM&Aによる規模拡大が手っ取り早い手段となる。ツルハが業界再編を仕掛けるとすれば、選択肢は2つ考えられる。

1つ目は、北陸地盤であるクスリのアオキホールディングスとの経営統合だ。ツルハが5%強、イオンが約10%、さらにオアシスも5.5%を出資している。ツルハとアオキの両社合算で売上高1兆3500億円強となり、業界トップに躍り出る。ただし大株主であるイオンとオアシスが賛同するかは未知数となる。

2つ目が、業界トップでイオン子会社のウエルシアHDとの経営統合だ。合算で売上高2兆円超の業界ガリバー企業が誕生することになる。ウエルシアはイオンにとって、高収益の優良子会社である。長年ささやかれ続けてきた業界再編だが、投資ファンドが両社の株主に入ったことで、そのきっかけが生まれるかもしれない

ぬるま湯の関係に終止符

結局はドラッグストア再編を促進させるのも停滞させるのも、カギを握るのはイオンである。投資ファンドの行動原理はシンプルで、金になりそうだと感じたら一気に株を買いに走り、損をしないよう立ち回る。一方でイオンの岡田元也会長は、経済合理性のみで判断するタイプではない。

オアシスによるツルハ株式への出資は、従来の会社と株主の”生ぬるい”関係がなくなる契機となった。ツルハにとっては会社が社員や経営陣のものから、大株主のものになりつつあることを示唆している。オーナー企業として成長してきたツルハHDにとって、一つの時代の終焉を迎えつつあるといえそうだ。

森谷 信雄 流通ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もりや のぶお / Nobuo Moriya

元日刊工業新聞編集委員。業界専門紙記者などを経て日刊工業新聞社入社。2018年に独立、流通ジャーナリスト、フリーライター、流通コンサルタントとして活動中。価格動向に関心あり、暇を見つけては店回りをしている流通好き。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT