ツルハ完全勝利を喜べない「株主イオン」の胸算用 ファンド提案否決でもドラッグ2位が迎えた転機

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セブン&アイ・ホールディングスで会長CEOを務めた中興の祖である鈴木敏文氏は、社内クーデターでその立場を追われた。しかし鈴木氏の元には、一線を退いてからもひっきりなしに事務所への来訪者が絶えない。

ツルハHDの鶴羽順社長は、鶴羽樹会長の次男(編集部撮影)

その理由の1つが、話に無駄がないことだという。徹底的に販売の機会ロスを削除してきたことで「ミスターロス」との異名を持つ鈴木氏の持論は、いつも立て板に水で寸分たがわず同じことを話す。90歳になっても鈴木氏に教えを請う誰かがいる間は、年齢で引退時期を区切る必要はないとも言える。

一方、ツルハ会長である81歳の鶴羽樹氏はどうだろうか。父親が創業した薬局を、2代目社長で兄の鶴羽肇氏がドラッグストア業態に切り替え、そこから全国区になるまで大きくしたという自負があるとみられる。社内外で鶴羽会長に鈴をつける人はいなくなってしまったのか。鶴羽順社長は会長の次男であり、その役割を望むことは難しいだろう。オアシスの提案は、ツルハが抱える問題を浮き彫りにした。

ドラッグ業界の熾烈な上位争い

今回の株主総会では、イオンがツルハに「貸しを作った」(流通業幹部)ことは間違いないが、別にツルハは経営危機に瀕しているわけではない。業績は堅調で、店舗網は拡大を続けている。“北海道企業の雄”として、ドラッグストア業界2位を維持している。

ただ、迫り来る不安がないわけではない。2021年に経営統合したマツキヨココカラ&カンパニーが僅差まで追い上げてきている。ツルハが業界3位に低下すれば、そのすぐ背後には、食品の安売りを武器に急成長を続ける九州地盤のコスモス薬品が控えている。

九州地盤のコスモス薬品は食品の安売りを武器に”東征”を進めている。そして東北エリアは、岩手地盤の薬王堂ホールディングスが食品の取り扱い強化などで客数増に向けて攻めており、ツルハは苦戦を強いられている。

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