「エネルギー地政学」で最重要国となったトルコ 世界のパイプラインがトルコに結集する現実

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そもそも、トルコは地政学的な位置づけとして、ユーラシア大陸のヨーロッパとアジアを連結する重要な位置にあります。そのため、ロシアやカスピ海諸国、そして中東からの天然ガスがパイプラインを通じてトルコを経由し、そこからヨーロッパ諸国へつながっています。現在、トルコには天然ガスパイプラインが集中しており、トルコ回廊(トルココリドー)とも呼ばれています。

「脱ロシア」で存在感が高まるトルコルート

そして、ロシアのウクライナ侵攻後、トルコの地政学的地位が飛躍的に高まりました。ヨーロッパは、ウクライナ経由のパイプラインによってロシアから輸入することが難しくなり、ロシアとドイツを直結するパイプラインの使用もストップしました。その結果、ヨーロッパが天然ガスを輸入できる方法は、基本的に次の2つの手段に限られることになりました。

1つは、カスピ海諸国であるアゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンといった国からトルコ経由のパイプラインによって輸入する手段。もう1つはアメリカや中東などからLNG(液化天然ガス) によって輸入する手段です。

トルコはもともと国内消費のためにイランからのガスパイプラインがつながっており、さらにイラクやアラブ首長国連邦(UAE)からも、そしてエジプト、イスラエルからもトルコに向かう天然ガスのパイプラインがつながっています。

そもそもカスピ海諸国は、トルコにパイプラインがつながっていなかった時代は、輸出する際に必ずロシアを経由する必要があり、ロシアに通行料を搾取されることがありました。しかし、トルコルートが完成し、ヨーロッパへ輸出する際にロシアを通過する必要がなくなったため、カスピ海諸国にとってトルコの存在が極めて重要となったのです。

また、脱ロシアを急ぐ欧州諸国にとっても、その重要性が格段に増しています。トルコから欧州へ向かうパイプラインも充実してきており、ナブッコ(NABUCCO)はオーストリアへのパイプラインであり、TAP、ITGIはイタリアにつながるパイプラインです。これらのパイプラインが脱ロシア、脱石炭の新たなエネルギー戦略として重要視されています。

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