「エネルギー地政学」で最重要国となったトルコ 世界のパイプラインがトルコに結集する現実
トルコからの天然ガス輸入については、イタリアは2020年12月から輸送を開始しています。ロシアによるウクライナ侵攻予測していなかったと思いますが、トルコからのパイプラインが完成していたことは、イタリアにとって幸運でした。
「平和か、それともエアコンか」
ウクライナ侵攻を受けて、イタリアは、2022年の5月から学校や公共施設で空調温度25度未満を禁止し、天然ガスの脱ロシア依存に踏み出しました。
イタリアはパイプラインがチュニジアやアルジェリアなどのアフリカ諸国とつながっていたため、ドイツなどと比べて地理的優位性がありました。しかし、産ガス国との交渉もあり、急にロシアからの天然ガス輸入を停止することはできません。そのため、代替手段が定まるまでは国民に節約を要請する必要がありました。
そこで、当時のドラギ首相が「平和か、それともエアコンか」という非常に印象的なメッセージを国民に発出したのです。イタリアのエネルギー戦略の変化を象徴するエピソードと言えるでしょう。
一方、ドイツは「ノルドストリーム」という、ドイツとロシアを直結する主力パイプラインがストップしてしまったため、エネルギー戦略で大幅な変更を余儀なくされました。
これまでのドイツは、再エネの推進や脱原発、脱石炭で世界をリードし、日本にも大きな影響を与えていました。その基盤にあったのはロシアからの天然ガスの輸入でした。しかし、そこが根本的に崩れたのです。その結果、ロシアへの依存度を上昇させてきたドイツのエネルギー戦略は、大きな転換点を迫られることになったのです。
こうしたエネルギーに対する「ロシア依存」の差は、外交・安全保障にも影響を与えます。ロシアのウクライナに侵攻に際して、ウクライナへの支援や対ロシア外交における両国の温度差に違いが生じた背景には、こうしたエネルギー安全保障の問題が影響していたことは明らかです。
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