「資源に無知すぎる日本人」が巻き込まれる大問題 「知らない」と損をするし、危険も迫る

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さらには近年、例をみないほどの酷暑や水害など、異常気象に対する関心も高まっています。まさに資源を「自分ごと」の知識として血肉化するタイミングが来ているということです。

ちなみに、私は京都大学で24年間、地球科学の研究と教育に携わってきました。また京大に着任する前に18年間勤務していた通産省地質調査所(現在の独立行政法人・産業技術総合研究所)では、火山学や地球変動学を始めとする地球科学の基礎研究に従事していました。

実は、この地質調査所という組織は、世界各国において国策で設置されている地球科学と資源政策の国立研究所です。日本では明治時代に創設され、その主要な目的は黎明期の殖産興業を支える鉱産資源の探査と安定確保でした。と言うのは、国家の繁栄は資源とエネルギーの調達力にあると言っても過言ではないからです。

日本は今「大地変動の時代」にある

私は1979年に東京大学理学部地学科を卒業して地質調査所に入り、先人たちの残した研究成果を引き継ぎつつ、地熱を含むエネルギー資源について研究を続けてきました。1997年に京都大学へ移籍してからは、日本を揺るがす地震や噴火の大事件が次々と起きました。中でも2011年3月11日に起きた東日本大震災から、日本列島では地震や噴火が頻発する1000年ぶりの「大地変動の時代」が始まっています。

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地球科学の観点からは、東日本大震災を引き起こした地殻変動はまだ終わっていないのです。むしろ日本列島は地震と火山噴火の活動期に入り、今後さまざまな激甚災害が予想されています。さらに現在世界的に問題となっている地球温暖化が、火山の大噴火によって地球寒冷化に置き換わる可能性も出ています。

すなわち、現在の日本ではエネルギーと環境の問題に対しても、「大地変動の時代」という新しい状況に即して対応しなければなりません。SDGs(持続可能な開発目標)の各項目についても、日本列島の現況に合わせなければ成果を上げることは不可能です。こうした時代の資源問題を理解するため必要なものが、地球内部と日本列島に関する正確な基礎知識なのです。

現在、我が国にはエネルギーと環境に関する喫緊の問題が山積しています。地球科学の基本的なリテラシーを獲得し、日本がいま置かれている事態をきちんと理解し、的確で有効な対処法を見つけていただきたいと願っています。

鎌田 浩毅 京都大学名誉教授・同レジリエンス実践ユニット特任教授

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かまた・ひろき / Hiroki Kamata

1955年東京生まれ。東京大学理学部卒業。通産省主任研究官、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。著書は『100年無敵の勉強法』(ちくまQブックス)、『理系的アタマの使い方』(PHP 文庫)、『新版 一生モノの勉強法』(ちくま文庫)、『火山噴火』(岩波新書)、『地球の歴史』(中公新書)、『一生モノの英語勉強法』(吉田明宏氏との共著、祥伝社新書)などのほか、研伸館との共著に『一生モノの受験活用術』(祥伝社新書)がある。YouTube「京都大学オープンコースウェア」で『京都大学最終講義』動画を公開中。

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