「子どもがいない人生」に苦悩する女性たちの本音 表立って語れない社会の生きづらさ(前編)

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ただ、そうはいっても「子どもがいない人生」というものがよくわからない。親戚など、私の周りにいる年上の女の人たちはみんな、結婚して子どもがいるライフコースを歩んでいる人ばかりで、ロールモデルがいなかった。仕事先で見かけても、「子どもがいない人生ってどうですか」なんてセンシティブなこと、なかなか聞けないですし。それで図書館に行って、そういった研究データや情報がないか調べたんですが、それも見つからない。

それで、2013年に自分で会を主宰したんです。ネットを通じて「子どもがいない女性同士で集まって、お話ししませんか?」と呼びかけて。そこで初めて「子どもがいない人たちの本音」をリアルに聞きました。

(画像:『まんが 子どものいない私たちの生き方: おひとりさまでも、結婚してても。』より)

みんな、底のようなところにいた

――同じような状況の仲間たちと出会えたんですね。

ただ、予想とはちょっと違ったんです。私はこのとき、気持ち的にはだいぶ前向きになっていて、「私たちみんな仲間だし、子どもがいなくたって楽しいわよね」みたいな肯定的なマインドで臨んだんですけれど、来ているほかの人たちは、もっと底のほうに沈んでいるような状態だった。

不妊治療を何年も続けたけれどできなかった、という人も多く、本当に「表に出られない」とか「友だちとも会う気がしない」とか、「つらい気持ちを吐き出す場がない」「誰にも本音を言えない」と、号泣したりしている。そういう人たちのリアルな気持ちを聞いたのが初めてで、「そんなにつらいのか」と、ものすごく衝撃を受けたんです。

つらいというのはある程度想像していたものの、「そんなにも立ち直れないのか」と。そのとき、子どもがいない人たちの社会課題のようなものに気付いたんですね。

――これはどうも、個々人でなんとかできる問題ではないぞと。

そうです。子育て中の人たちが悩みを共有したり、知恵を授け合ったりする場は、まだあるじゃないですか。でも子どもがいない人たちって、一人ずつ孤立していて、共有の場がまったくない。私が主宰した会では、みんな初めて本音を言ったわけなんですよね。

夫にも言えない、という人も結構いるんです。以前アンケートをとったことがあって、「子どもがいないことの本音を誰かに話したことがあるか」と聞いたら「誰にも話したことがない」という人が一番多かったんです。

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