横暴すぎるロシアに欧州はどう対抗すべきか 今度はデンマークを「核の標的に」と"脅迫"

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これは、国際法に対する目に余る侵害にとどまらない。ロシアが繰り返し述べている「他国の費用で安全を保障する権利を持つ国はない」という主張にも真っ向から反しているのだ。ウクライナのデモ参加者たちは、ウクライナ政府に抗議していた。ウクライナがロシアにとって軍事的脅威になるとの考えはばかげている。仮にウクライナがNATO加盟国だったとしても、ロシアへ侵攻するのは不合理なシナリオだっただろう。

ロシアにとって、ウクライナの抗議者たちによる脅威は、自国の存在を揺るがしかねないものだった。変革と自由と民主主義を要求したことで、抗議者たちはプーチンの唱える「主権民主主義モデル」に異議を申し立てたのだ。ウクライナ市民が要求を満たした場合、ロシア市民も影響を受けるかもしれない、とロシア政府は危惧したのである。

そのため、ロシアの指導者たちは、ウクライナの指導者たちをロシア嫌悪者やファシストに仕立て上げようと躍起になった。自由民主主義は悪で、プーチンの下での生活こそが善である、とロシアの人々を必死に説得しようとしている。

ロシアには民主主義で対抗せよ

ロシアのプロパガンダ攻撃に対抗して、欧米諸国はウクライナやバルト3国などのNATO加盟国のために、今後も立ち上がらなければならない。

欧米諸国の最大の強みは民主主義である。これによりわれわれは2世代にわたり平和を守ることができたし、兵器の力にほとんど頼ることなく欧州から共産主義による支配を除外したのだ。自由民主主義は完璧から程遠いながら、過激主義や偏狭さに対する最大の盾であり、人類の前進を促す最も強力な存在である。

近隣国の影響により、ロシアの人々が改革を求めるかもしれないというだけの理由で、ロシアが近隣国を攻撃することを欧米諸国が認めてしまったら、民主主義の価値は守るに値しないというメッセージを発することになるだろう。

ロシアのメディア担当顧問にだまされてはならない。ウクライナの紛争は、民主主義に関する問題なのだ。

週刊東洋経済2015年5月16日号

アナス・フォー・ラスムセン 元NATO(北大西洋条約機構)事務総長

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元デンマーク首相。ラスムセン・グローバルの創立者であり会長を務める。

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