前々回のコラムでは、ロシア出張があったため、その成果を東洋経済オンラインの読者の皆様に報告しようと、「ロシアでレクサスが『バカ売れ』するワケ」を記した。
また、前回は突如鳩山元首相がクリミア半島を訪問したという情報を受け、「鳩山由紀夫元元首相は、宇宙人か馬鹿か天才か」と題してお送りしたが、いずれもありがたいことに、多くの方に読まれたようだ。
実は、この間、東洋経済新報社から、中国に関する本を刊行させていただいた。題して「中国のエリートは実は日本好きだ」。
すでに中国には今までに200回以上渡航し、中国は私のライフワークとなっているわけだが、その視点から素顔の中国に迫ったつもりだ。
「反日」ばかりが喧伝される中国だが、本のタイトルにあるように、実像は全く異なる。巷にあふれている「中国本」とは一味違うものに仕上がっているので、ぜひお読みいただきたい。
さて、今回のコラムでは、再びロシア出張報告の続きである。前々回のコラムではロシアを三重苦と評したが、ロシア経済の状況を分析すれば「多重苦」と呼んだ方が、より的確であるかもしれない。
ロシアは破滅的な「パーフェクトストーム」状態!?
今回、私はモスクワの鉱山セミナー(MINNEX FORUM)という国際会議に出席したのだが、ロシアのトップグループの鉱山、冶金産業の経営者も多数参加していた。セミナーではロシア経済の多重苦を「パーフェクトストーム」(Perfect Storm)と表現していた。
この言葉は、2000年制作のアメリカ映画のタイトルに由来する。複数の厄災が同時に起こって破滅的な事態に至ることを意味し、今のロシアの経済状況について比喩的に使っていた。1997年のノンフィクション小説『パーフェクトストーム -史上最悪の暴風に消えた漁船の運命』が原作とのことだ。
さて、ロシア経済の多重苦の原因は、資源ブームの終焉、石油相場の下落、国内景気の低迷、欧州の不況、そして通貨暴落から来るインフレといったことになるだろうか。
2003年から続いていた資源ブームは、約10年間ロシア経済を潤した。プーチン大統領という、かつてない政治家がリーダーシップを発揮したことも幸いした。ところが資源ブームの終焉でロシアの環境は激変した。ロシア人たちにとっては「こんなはずではない」と思っているから複数の災厄「パーフェクトストーム」がやってきたと感じているのである。そして、ロシアの多重苦を倍加させているのが、欧米の「経済制裁」である。
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