私の仕事はレアメタルの輸入である。ロシアからのレアメタル輸入においても、日本商社の中ではトップクラスである。だがここにきてロシアのレアメタルの輸入に支障が出てきたため、今回も複数の供給元の経営者と面談をして状況の把握に努めた。
あくまでも前向きなロシア人経営者たち
資源相場の低迷の原因は資源ブームが終わったからだが、当然、金属相場も全面安の状況だ。世界を鳥瞰しても米国以外の市場では不況色が強まり需要が戻らなくなっており、市況はすぐに回復しそうもない。
特に中国が冴えないために中国内の市場には在庫がジャブジャブでこれが全世界市場に影響している。だが、会議の前段でなされたアンケートが発表されたのだが、意外なことに、ロシア資源企業の意見は前向きだった。
結論を要約すると以下になる。
ロシアの経済は景気後退期に入っているが、資源ビジネスという面からは、通貨ルーブルの切り下げを生かせばチャンスである。
具体的には、地質探査、輸出販売、供給機能の統合、新規資源と資産の取得をすすめるチャンスである。
業務の効率化の面では労働生産性、生産資産管理、購買、およびサポート機能の大幅な改善が重要、としている。
パネルディスカッションでも、市場の深刻さよりも前向きで活発な意見が多かった。プラス思考というだけでなく、実はロシアの資源企業の幹部たちが経済的な多重苦を楽観視していることが印象に残った。
私の経験ではロシア人とロシア企業ほど我慢強い民族は見たことがない。だから今回の複数の災厄も必ず乗り越えると信じている。一般的に大国と呼ばれる条件には資源、人口、技術力(軍事力)の要素が必要だと考えるが、ロシアはこの3要素をクリアしている。いずれ資源分野が息を吹き返してきた時、ロシアは再び主導的な立場を取り戻すと私は信じている。
さて、ロシア経済にとって、最も重要なテーマは石油価格の動向と将来の見通だ。昨年一時110ドルをつけた原油価格は今や40ドル台まで下がっている。石油だけでなく天然ガスの輸出額も大幅に下落したために、当然ロシアの貿易赤字は深刻だ。
通貨の暴落でインフレが進み、食料品は値上がりし、市民の生活を圧迫しているのは周知のとおりだが、国内産業においても原料コスト上昇が経営を圧迫している。一方、給料水準は据え置きのため、一部にはストライキも辞さない構えだ。石油価格はロシア経済の生命線と言っても過言ではない。1985年から1990年までの旧ソ連の崩壊時も、1998年のアジア通貨危機も、2008年のリーマンショック時も、いずれも石油価格が低迷していた時期に起きたことは記憶しておくべきだ。
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