逆に、石油価格の高騰時にはロシア経済が急成長している時期に重なっている。ロシアの歳入の50%が石油関連という体質から脱却しない限り、ロシアの経済回復はあり得ない。
米国の陰謀説を喧伝するロシア人経営者
なぜ石油価格が下落しているのかについては共通見解があるわけではない。ただロシア側からの見方も含めれば以下のようなことになる。すなわち、価格下落の主役は巷間言われるように米国とサウジアラビア。
米国の当面の敵はロシアとイランだが、米国は友好国であるサウジアラビアにOPECの協調体制を止めて、いったん原油価格の下落を誘導するように要請したとしている。「アメリカはこれまでも世界の産油国の紛争を誘導し、石油精製施設などが機能しないような戦略をとっていることが見え隠れする」とロシアの友人たちは口をそろえて言うのだ。
具体的にいえば OPEC加盟国とは現在の加盟国はサウジアラビア以外では イラク、イラン、クウェート、ベネズエラ、カタール、リビア、アラブ首長国連邦、アルジェリア、ナイジェリア、アンゴラ、そしてエクアドル の合計12か国である。なぜかは判らないのだが、これまで米国が国連の名のもとに「紛争を調停する」といいながら混乱が収拾できていない国家が多いのは、米国の陰謀だとロシア人経営者たちは言うのである。
国連が完全に合意したわけでもないのに米国は「世界の警察だ」と言いながらイラクを攻撃して旧体制を崩壊させたが、ミサイル攻撃の結果「核設備はなかった」ということが後になって判明した。中東諸国の混乱は米国が余計な内政干渉をしなければ「混乱は避けられたはずだ」というのがロシア人経営者の見解だ。確かにこうした意見は日本には伝わらず「アメリカは正義で、中東の一部には危険な国家がある」という誤解が消えないのは不思議だ。
イラクの話はさておき、今や米国はシェールオイル・ガスの一大生産国となり世界のエネルギー地図を塗り替えつつある。その米国には石油輸出国機構は崩壊したほうが、米国の国益になるとロシア人経営者は言う。さらにOPECが調整弁にならなくなると石油価格のコントロールが利かず、てロシアのエネルギー戦略自体も機能不全に陥る可能性がある。
サウジアラビアの原油の原価は、最安値で20ドル以下ともいわれる。サウジアラビアにとっても米国のシェールオイル・ガスが脅威であるから、今のうちにつぶしておこうという意見がサウジ国内にあるとも聞く。実際、アメリカと裏で協調しているのかどうかは、現段階ではまだ判然としない。
さて、ロシアの友人たちは今回のロシア制裁の背景について、以下の3点に要約して話してくれた。
ロシアのEU経済への影響力が増大した結果、米国の苛立ちが増大してきた。
プーチン大統領が米国主導の国際経済へ反発したことを米国は快く思わなかった。
ロシアと中国による米ドル基軸通貨体制への挑戦が加速したため米国のドルの威信が揺らぐ可能性がある。
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