国家はグローバル化で本当に弱体化するのか

ナショナリズムの賢い活用法

ソ連の崩壊以後顕著だったグローバル化が、ますます加速している。金融などの規制緩和、情報通信の発達、旧共産圏の自由経済市場への参入などが相まってヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えてどんどん飛び交う時代だ。こうした結果、国境が意味をなさなくなってくると、従来の「国民国家」の弱体化が進むとの見方がある。実際のところはどうなのだろうか。

19世紀の欧州から形成が始まり世界全体を覆い尽くしていった国民国家だが、そのベースにあるのはナショナリズムだ。英国哲学者アーネスト・ゲルナーは主著『民族とナショナリズム』で、ナショナリズムとは「政治的な単位と民族的な単位が一致しなければならないと主張する一つの政治的原理」と定義している。簡単に言えば、祖先・歴史・文化などの共通性を基に同朋意識を持った国民国家を形成するのが、ナショナリズムの力学といえよう。

ゼロサムの力関係ではない

資本の論理により、民族や国家に関係なく国境を無効化しようとするグローバル化とナショナリズムは一見、ゼロサムの力関係となりそうだが、実際にはそうではない。歴史を振り返れば、グローバル化が拡大するとナショナリズムはむしろ強化される傾向があるようだ。資本主義が先鋭化し、格差拡大や経済の不安定化が進むと、政治指導者は経済政策や所得の再分配政策といった国家による対応強化を迫られるからだ。国民の結束が呼びかけられ、ナショナリズム感情は高まりやすい。

第一次世界大戦前の局面では、こうした状況は植民地主義とセットになってマイナス方向に作用した。経済政策の一環として、「国民の生活を守るために植民地経営を拡大する」という流れが定着し、金融資本や多国籍企業と政府が一体となって植民地によるブロック経済化を推進することになった。また自国外の国民に対する排外主義の高まり、国民国家で可能となった徴兵制による総力戦体制などが加わり、人類史上最悪の凄惨な戦争となったのは周知のとおりだ。

しかし、現代のグローバル化は、違った顔を見せている。最近のロシアにきな臭い動きはあるものの、金融資本や多国籍企業と政府が一体となって植民地を獲得しようという動きは皆無だ。それによって、国民国家と多国籍企業の利害が一致しなくなったことが、現代のグローバル化の最大の特徴と言える。

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