新聞の敵は「NHKのネットではない」と断言できる 「ニュースはネットでタダで読める」からの脱却

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NHKは2020年から「NHK+(プラス)」というアプリで同時配信+見逃し配信をスタートした。民放は在京キー局が団結してTVerアプリを2015年に開始していた。NHK+の登場でTVerはユーザー数を減らしてなどいない。「2023年度第1四半期業務報告」によるとNHK+はID登録数401万、週平均のUB数は150.6万だった。

TVerは今年4月に累計ダウンロード数6000万を超え、5月の月間UB数は2800万に達した。NHKの週平均150.6万を4倍にしても600万程度で、TVerのほうが断然多い。先に始めたサービスの優位性はあるにしても、NHK+が何の民業圧迫にもなっていないことがわかる。

TVerはドラマ・バラエティーなどエンタメ中心だが、NHK+だって民放ドラマより視聴率が高い朝ドラや大河ドラマを視聴できるのだ。NHKがネットではさほど強い存在ではないのは明らかだろう。民業圧迫は幻だ。新聞協会は幻といつまで戦い続けるのか。

新聞協会のこれからの本当の敵

新聞協会のこれからの本当の敵はNHKではなく、「多死社会」だ。都内ではすでに火葬場が1〜2週間待ちになっている。高齢者がどんどん亡くなっているからだ。その影響を、今後の新聞業界はダイレクトに受けてしまう。

新聞通信調査会の「メディアに関する全国世論調査2021」によると、「月ぎめで新聞を取っている人の割合」は70代以上が84.0%で、しかも前年より増えていた。いわゆる団塊の世代が70代に入ったのでかなり大きな人数だ。60代は71.6%で前年比-6.1%、50代は61.3%で前年比-5.3%といずれも大きく減少していた。40代は46.2%でなぜか前年より+3.1%だったが、とにかく若い世代ほど新聞を取っていない。30代は32.4%だった。ざっくり言うと、70代以上が新聞購読者の核なのだ。

次に、国立社会保障・人口問題研究所が出している2020年と2030年の人口予測を調べてみた。2020年の70歳以上は合計2795万人だったが、同じ人たちが2030年に80歳以上になり、予測値によると人数は1569万人に減る。実に1226万人、44%も減るのだ。

新聞購読者の中核たる70歳以上が2030年までに半分近くにまで減少する。その下の世代は購読率が下がっている。まさか60代の人が70歳になったら「わしも年寄りになったから新聞でも取るか」とはならないだろう。今後、新聞発行部数は雪崩のように減少が加速する。

今年は各新聞が購読料を値上げした。紙の価格上昇で上げざるをえないのだろう。2021年から2022年にかけて、新聞の発行部数は3303万部から3085万部へと218万部も減らした。購読料の値上げで今年はさらに部数減少に拍車がかかるだろう。

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