こうして2023年3月、「今池飯店」はオープンした。真っ赤なテントに赤いテーブル。中華鍋のカンカンカンという音が響き渡る、まさに昭和の町中華の空間だ。
「町中華は空気感が本当に大事です。オシャレには作らず、おじいちゃんの家に来た時のような落ち着きのある“ちょいダサ感”。でも当時はこれが最新の内装だった。あの時の最新を今まねることで新しさが出るんです。
日本の大衆食堂の名残を感じるように内装、時計、水を入れる瓶、皿など徹底的にこだわる。オシャレ感よりも安心感、居心地の良さ、ほっこり感が大事です。自分が町中華出身だからこその空間作りができたことが大きいと思いますね」(新山さん)
塩と醤油の使い方に“懐かしさ”を見いだした
そして、この「今池飯店」の中華そばが本当にうまい。昭和の懐かしさをしっかり感じながら、今食べてもインパクトをしっかり感じる絶品の一杯だ。その秘密を教えてもらった。
「数あるメニューの中でも『中華そば』が一番難しかったですね。町中華感を出したいというのと同時に『はなび』感を出したくないというテーマもありました。町中華をやるのだから、仕込みから昔ながらの昭和のやり方をすることに決めました。昭和の時代のシンプルな作り方に逆にこだわったんです。
逆に、麺のかたさは現代風にしています。昔の麺はもっと柔らかかったと思いますが、今は“麺にコシがある”ことがラーメンファンに満足していただけるポイントの一つです。
そして、少ししょっぱいこともポイントです。食が欧米化してから、少ししょっぱくないと満足感が得られなくなってきています。塩角のパンチで一口目の感動を与え、味のインパクトを残す。そしてこのスープに負けないように麺を少しかために仕上げるのがこだわりです」(新山さん)
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