外国人観光客が頼る、あの東京ガイドの強み

地域密着の「タイムアウト」は何がスゴイのか

たとえば、今シリーズでやっている「渋谷でしかできない101のこと」のような企画もオリジナルはロンドンです。ローカルエキスパート(地元の目利き)が情報を編んでいるので、海外から出張や観光で来た人だけでなく、東京在住の人にも読まれていて、日本語版も人気ですよ。

雑誌ではなく、デジタルで始めたかった

──音楽業界にいた伏谷さんが、なぜタイムアウト東京を創設したいと思ったのですか。

本社は「外国人が多い」という理由もあって、東京・広尾に構えた。編集部内では日本人と外国人の編集者が肩を並べる

もともとCDショップのタワーレコードと音楽配信サービスのナップスターの日本展開を手掛けていたのですが、タワーレコードを辞めたあと、次は逆に日本のいいサービスやコンテンツを世界に向けて伝えたいという野望がありました。それにはバイリンガルのメディアが必要だった。

2008年ごろ、(日本には)ウェブサイトや紙で30を超えるマルチリンガルのメディアがあったけれど、僕自身は知らなかった。CNNやニューヨークタイムズのスポット的な報道だけでなく、日常的に世界に日本を伝えるメディアがあってもいい。実はタワーレコードにいた2004年頃、知り合いの紹介でタイムアウトの東京版をやらないかと相談があったのですが、「いくらグローバルなマガジンブランドでもこれからはデジタルの時代。日本でビジネスにならないのではないか」と断ったんです。

 その後、そういえば「ロンドンやニューヨーク以外にも世界の大都市にある」とその知り合いが話していたのを思い出した。そこに東京を"プラグイン"することで日本の情報を発信し、海外の情報も取り入れやすくなると考えました。携帯のメモリにあった番号を探し出し、彼に電話をかけました。

──そこからどういう経緯で立ち上げたのですか。

その知り合いと、ロンドンの創業者、トニー・エリオットにアポを取って会いにいきました。20代前半でおばさんに70ポンド借り、台所でわら半紙を折りたたんで創刊号を作った人物です。

ビートルズが「ホワイトアルバム」を出した年に創刊したのですが、音楽シーンが新しくなり、学生運動も世界に広がり、ロンドンで若者たちが新しいカルチャーを生み出していった活気ある時代だったのでしょう。そうした仲間たちの活動を伝え、自分たちが好きな音楽、アート、食などを伝えていったのがタイムアウトの原点です。

創業者には「東京でタイムアウトをやりたいけれど、ビジネスとして出版をやったことがない。ベンチャーとして始めたいので、雑誌を先に出すのはリスクが大きいからデジタルから始めたい」と正直に言いました。出版の人だから怒られるかと思ったのですが、もう70代にさしかかっている創業者はiPhoneを片手に、「確かにこれからそういう時代だから雑誌作らなくてもいいよね」と軽やかな反応で(笑)。タイムアウトの誌面そのままのキャラクターでしたね。それから前向きに事業計画を話し、半年くらいしてライセンス契約を結んだ。100 %こちらの資本で始めました。

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