外国人観光客が頼る、あの東京ガイドの強み 地域密着の「タイムアウト」は何がスゴイのか

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タワーレコードも同じだったのですが、たとえばヒップホップが好きな人のコアなコミュニティがあるとします。その人たちはネットを通じて世界のヒップホップ好きコミュニティとつながっているかもしれないけれど、自分たちの近くにいるコミュニティに入ってくる可能性がある存在に気づいていないかもしれない。そこに橋をかける。

Jポップは好きでラップがちょっと入った歌に興味があるけれど、Jポップしか知らないという人たちが、タワーレコードでふとヒップホップのCDを聴いて「いいな」と思ったら、今度はタワレコという橋を渡って、ヒップホップのレコード専門店に行くことになるかもしれない。

「タイムアウト」も外食、アート、映画、音楽などいろんなところに橋をかけることができる。しかも、グローバルにそれができるというのはかなり面白い。

日本人も週末にさくっと海外に行く時代が来る

──グローバルブランドの「タイムアウト」はコンテンツが無料でも広告が取りやすい強みがある。今後も広告収入でいくのか、コンテンツを有料化するなど戦略は?

コンテンツの有料化は考えていませんが、eコマースなどユーザーから直接お金をもらうビジネスにつなげていく取り組みは、ロンドンを中心に始まっています。また、ロンドンで「プレミアムプロファイル」という新しいサービスの売り上げが上がっています。日本でいう「食べログ」や「ぐるなび」の店舗向けサービスに似た仕組みですが、タイムアウトのネットワークをグローバルに活用できます。たとえばクアラルンプールからのインバウンドが欲しいと思う寿司屋さんがあれば、タイムアウトクアラルンプールで「sushi」や「Japanese restraunt」と検索されたときに、検索結果の一番上に店の名前が表示される。そういう広告機能ですね。

それから同じくロンドンで「タイムアウトカード」が昨年導入され、いろんな優待サービスを提供しています。ロンドンでは「タイムアウト」を見て何をするか、どこへ行くかを決める人が7割を超えるというデータもあり、タイムアウトの良質なレビューと、チケット購入やレストラン予約の優待を組み合わせることで、サービスを差別化することができる。これが進めば、僕自身の流通小売りの経験も生きてくる(笑)。

──これからの「タイムアウト東京」の目標は?

いま「タイムアウトロンドン」のスマートフォンアプリが、100万人ぐらいのユーザーを抱えているのですが、「スイッチシティ(街を変更)」というボタンを押すと、同じインターフェイスでニューヨークや他の俊のガイドに切り替えることができる。データベースを同じフォーマットを作っているので、可能なんです。このグローバルプラットフォームに、タイムアウト東京の英語版を載せたい。

グローバルのタイムアウトユーザーがアプリを通じて、日本に来てもらえたらいいですね。東京オリンピックをまず目標にして、その後は資金ができたらアプリを日本語化して、日本の人がタイムアウトを使って海外へ行くのをサポートしたい。

ネットで世界が小さくなったように、これからLCC(格安航空会社)がもっと普及し、移動するコストも下がり、リアルな世界も近くなる。会社帰りにどこかで待ち合わせをするみたいに、「週末はちょっとクアラルンプールに行って美味しいものでも食べよ」、というようなことが、そう遠くない時代に来てしまうのではないか。そのときにタイムアウトのようなグローバル感覚のシティガイドが役に立つのではないかと思います。

(撮影:梅谷秀司)

斉藤 真紀子 ライター

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さいとう まきこ / Makiko Saito

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリーに。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長。共著に『お客さまはぬいぐるみ 夢を届けるウナギトラベル物語』

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