外国人観光客が頼る、あの東京ガイドの強み 地域密着の「タイムアウト」は何がスゴイのか

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──音楽業界での経験は今のビジネスにどう生かされていますか。

音楽CDのマーケットも出版のマーケットも両方右肩下がりですよね。だから状況的には近い。タワーレコードの新宿店店長をしていて売り上げが一番だったのに、渋谷店ができて圧倒的に差が付いた2番になった。そこで、ポスト大型店を作るにはどうしたらいいか考えていたときに、アメリカのタワーレコードがeコマースを始めるという情報が入ってきたので勉強を始めて、1996年にeコマース事業部を立ち上げました。「大型店に並んでいる大量のCDはデータベースだ」と気付いたのがきっかけでした。データベースはデジタルと相性がいい。それをビジネスとして推進していきたいと思った。

メディアはたこ壷とたこ壷をつなぐ橋

「タイムアウト」も実は同じ。ウィキペディアで調べると「リスティング(listing)マガジン」というカテゴリーで紹介されているように、街の情報をデータベース化して掲載している。いわゆる雑誌をそのままきれいに体現してデジタル化するのは難しいですよね。でも、街をデータベース化して何を紹介するかを雑誌に読み込んできたのが「タイムアウト」だから、デジタルファースト戦略もぴたりとはまる。

──タイムアウトを知らない日本人にどうブランド認知を広げていきますか。

タワーレコードが日本に来ていなかったら、日本の音楽好きは豊かな音楽ライフを送ることができたのか。そんなふうに考えると、僕もそうでしたが、タワーレコードよって音楽ライフの質がぐんと上がったと思う。

日本はシティガイドがすでにたくさんあり、観光も成熟した市場ですが、グローバルに通じたシティガイドが広まることによって、かつてタワレコが日本の音楽環境をよくしたように、ライフスタイルに新しい風を吹き込むことができればと思っています。

最近地方の観光事業活性化を目的とした講演に呼ばれることがありますが、外国人の視点を取り入れながら、インバウンドを広げていくことに対する問題意識が高まっているように思えます。そうすると、いままで観光資源として注目されていなかった場所も見方がかわる。「田んぼを見ながらラーメン屋に並ぶ」というのが、行ってみたいポイントになるかもしれない。

何気ない日常のなかに面白いと思ってもらえるものがあるという目線を持てると、もっとその場所の魅力を掘り起こせるので、その入り口としてタイムアウトを活用してもらえたらと思います。

──雑誌など紙の媒体はどういう発想でデジタル化の波をとらえていけばいいと思いますか。

インターネットが広がって苦しくなっている業界であるとは思うけれど、ネット上にある玉石混交の情報を編集して届けるという仕事が必要とされないはずがない。僕はメディアブランドの役割を「タコ壺とタコ壺をつなぐ橋になり得る」ととらえています。

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