「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻
大分空港では大分県が仲介してJALの委託先のグラハン職員を投入して韓国からの便を受け入れた。だが、鹿児島県庁の関係者は「海外エアラインの中には行政に泣きついてくるところもあるが、基本的にグラハンをどうするかは民間同士の契約の問題だ」と話す。それでも県は、グラハン業務の資格取得費用の一部を助成する制度を導入した。
南国交通では上限3000円だった資格手当を1万円に増やしたり、職員が利用できる空港リムジンバスの回数券を支給したりするなど、待遇改善に邁進している。社員寮の部屋をリニューアルし、シャワーのヘッドを高級品に取り替えるなど涙ぐましい努力も積み重ねている。
こうして2023年度は約20人の新規採用に結びついた。ただ、即戦力となる航空専門学校の卒業生はゼロ。「福岡などの専門学校で学んだ鹿児島県出身者が、鹿児島に戻ってこない」(有村部長)のだという。
グラハン従業員の平均年収は326万円
国土交通省も対応に本腰を入れる。2023年2月に有識者による「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」を立ち上げ、グラハンの人手不足への対応を検討してきた。同検討会の資料によれば、コロナ禍の中で地上職員の離職者が相次ぎ、コロナ前に比べてグラハン作業員数は1~2割減った。航空専門学校への入学者も4割減っている。
有識者会議は6月、「現場で働く人の使命感などに甘え、『やりがい』の搾取を続けているような現状は、一刻も早く改善していかなければならない」などとする中間とりまとめを発表した。
「グラハンのコストを抑えようと、エアラインは業務を外注化し、必然的に待遇は悪くなっていった。今後も航空業界の人気から労働力の供給は見込まれるが、熟練スタッフの離職を止めるには待遇改善が必要。外国人労働者の受け入れも積極的に進めていくべきだ」
こう指摘するのは、桜美林大学の戸崎肇教授(交通政策が専門)だ。国交省の資料によれば、グラハン従業員の平均年収は326万円と、建設業の451万円と比べても見劣りがする。休憩所のトイレはいまだに和式、そもそも休憩スペースもなく、ターミナルのロビーのベンチで仮眠をとっているケースもあるという。
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