「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻

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6月に政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針」には、訪日外国人拡大に向けた航空需要回復の推進とともに、「空港におけるグランドハンドリング・保安検査体制の強化等を含めた航空・空港関連企業の経営基盤強化」が盛りこまれた。

グラハンスタッフの待遇改善は、もはや国策になっている。グラハン事業は羽田でも6割、地方空港ではすべてをエアライン系以外の地元企業が請け負っているケースが多い。グラハンを含む空港関連企業の強化は、直接地元企業にメリットがあるだけでなく、地方のインバウンド拡大の基盤にもなる。そのためには、グラハン委託料の値上げも喫緊の課題となるだろう。

業界、行政の意識改革が求められる

「これまで地方の首長は、海外のエアラインに頭を下げ、就航をお願いし、グラハン会社が人的にも金銭的にも無理をして受け入れてくれていた。いまの人手不足はそれに目をつぶってきた結果だ。委託料を引き上げることで、職員の給料も上げて、設備投資もできるようになる。外航の就航には費用もかかるが、毅然とやっていくべきだ」(国交省関係者)

「2030年訪日外国人客6000万人」を目標に掲げるなど、「数」を求めてきたのは国自身にほかならない。真の観光立国に向け、航空業界、行政を含めたすべての関係者の意識改革が求められる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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