「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻
南国交通は1970年の現・鹿児島空港開港以来、グラハン業務を請け負ってきた。カウンターで接客を行うグランドスタッフを派遣しているのも南国交通だ。
コロナ禍前、同社ではこうした地上業務に携わる社員を約400人抱え、離島路線を含むJAL(日本航空)、ANA便に加え、ピーチアビエーションやソラシドエア、FDA(フジドリームエアラインズ)など、スカイマーク便を除く1日約90便の国内線、さらに韓国や中国、台湾からの定期便、チャーター便の地上業務を請け負っていた。
ところが、2020年のコロナ禍で国内線の4割が減便、国際線に至ってはゼロになった。この急激な需要減に合わせ、南国交通は毎年30~40人だった空港職員の採用を数人に絞り込んだ。過密ダイヤのため遅番や早番職員の残業でまかなっていた勤務シフトは、むしろ時短勤務を導入することになった。
一方、この間にも毎年60人程度の退職者は出続けていた。もともと低賃金で時間が不規則な職種。離島に飛ぶ小さな飛行機の離着陸時は重たい荷物を人力で抱えて積み込むこともある。カウンターでは乗客からのクレームにつねにさらされる。
400人いた空港スタッフは2割減
「コロナ期間中は残業代がなくなり、所得も減ったことを機に辞めていった社員も少なくない」(有村部長)という。400人いた空港スタッフは一時320人まで減った。
そこに、コロナ後の需要急回復だ。いまでは国内線全便が復活し、6月には香港エクスプレスが3年ぶりに週3便で香港便を復活させた。
「海外路線の復活は寝耳に水だった」(有村部長)という南国交通。すぐに職員を充てることができず、JALや香港の航空会社から職員が現地に派遣され、ようやく航空機を受け入れることができた(7月17日からは南国交通の単独ハンドリング)。
その後、ほかの海外エアラインからも路線再開を打診されているが、受け入れ体制はいまだ整わず実現していない。
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