「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻
さらに構造的な問題もある。
グラハンの作業は、客室のドアの開け方から貨物の積み込み方に至るまで、作業手順や方法が細かく定められており、機種ごとはもちろんJAL、ANAでそれぞれのやり方がある。作業車両のボタンやレバーの位置も、それぞれの系列で異なっている。このため、前出の南国交通のグラハン職員は「JAL運送課」「ANA運送課」に分かれ、それぞれの系列の社内資格を取る必要がある。
離島路線は天候によってダイヤが乱れがちだが、時間に比較的余裕があるANA便担当者がJAL便の応援に入ることはできない。
この問題は国の有識者会議でも問題視され、「系列ごとに異なる資格者車両仕様等の見直し・業界ルールの整備(特に地方)」といった提言も検討会の中間とりまとめに盛りこまれた。
待遇改善に国が責任を持つべき
福岡空港では同じスポット(駐機場)でJAL機とANA機が到着するたびに、それぞれの系列の作業車が遠く離れた駐車場からやってきていた。2021年7月からJAL・ANAで車両を共有化して、スポット周辺で待機する実験を行ったところ、国内線で最大18%、国際線で70%の走行距離を削減できたという。
「JALとANAはライバルとしてサービス水準や安全性向上を競ってきたが、福岡空港で共用化をやってみたら効果も出た。資格の統一や車両の共用化は積極的に進めてほしい」と国交省の担当者は話す。
航空業界はグラハンに特化した業界団体を今年8月に立ち上げて、資格や車両の共通化を含め議論を深めていく方針だ。
さらに、前出の戸崎教授は「日本が観光立国をうたい続けるのであれば、委託料の流れを透明化したうえで、グラハンスタッフの待遇改善などに国が責任を持つべきだ」とも指摘する。
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