飲食店がコストコ並みの時給にできない最大の訳 さらに人手不足に陥る悪循環に陥っている

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その中の1つが、スキマバイトサービス「タイミー」 を活用した事例だ。タイミーは2018年8月にサービスを開始して以降、利用者が増え続けており、今年の6月に累計ワーカー数が500万人を突破した。深刻な人手不足はもちろん、スキマバイトで来たスタッフを直接採用できるとあって、多くの飲食店で活用が進む。

タイミーはあくまでも、シフトが埋まらないとき活用されるサービスだ。しかし、その活用を前提にした飲食店が登場し、話題を呼んでいる。それが5月に新橋にオープンした「THE 赤提灯」だ。

同店はタイミーと、新橋を中心に飲食店の運営やプロデュースをするミナデインがタッグを組んで誕生しており、メインターゲットに「まだ酒の美味しさや楽しみ方を知らない20歳」を据えている。店舗の運営は基本的に2人の社員と4人のアルバイトで運営。そのアルバイトは全員タイミーによって募集されるスポットワーカーであり、うち2人は必ず未経験者を活用している。

繁盛しても忙しくならない飲食店

なぜこうした体制が可能かというと、それでも回るオペレーションを組んでいるからだ。そもそもミナデインはこれまでの外食業界の常識を覆す提案を得意としている。例えば、同じ新橋で運営している昼は食堂、夜は居酒屋の「烏森百薬」は、「名店のセレクトショップ」と銘打ち、全国からのお取り寄せをメニューとして提供している。全国各地の人気商品が一度に楽しめるところにあり、2018年に開店してから、瞬く間に繁盛店の仲間入りをはたした。

通常の飲食店だと、繁盛店になればなるほど、仕込みに時間を取られたりして労務環境が悪くなってしまうケースが目立つ。しかし、同店の場合、発注をすればいいだけなので、どんなに繁盛しても労務環境が悪くならない。従業員の働きやすさを考えても、メリットは大きい。

THE 赤提灯は、こうした取り組みができるミナデインだからこそできた業態だ。同店でも、あえてカンペを積極的に活用するなど、未経験ならではの初々しさを生かした提案を行う。まだ頻繁に居酒屋を利用したことがない若年層の客と、未経験のアルバイトだから成り立つ提案だとも言えるが、そのアイデア自体が俊逸なのは間違いない。

タイミーの時給は、平均よりも少し高いが、飲食店にとっては繁閑差で使い分けて、人件費をコントロールできるメリットがある。FLRコストのうち、以前は家賃だけが固定費だったが、人手不足が加速して自店で囲い込む必要が出てきたため、人件費も固定費となりつつある中、タイミーのようなサービスを活用することで、飲食店、働く人ともに利益や収入アップを実現できる環境が作れるかもしれない。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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