飲食店がコストコ並みの時給にできない最大の訳 さらに人手不足に陥る悪循環に陥っている

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3.安くて当たり前という価値観

日本では、ワンコインで牛丼が食べられたり、ラーメンの価格が1000円を超えなかったりと、飲食店の価格が安くて当たり前だという価値観がある。世界的に見ても日本の外食の価格は安いことで有名だ。

イギリスの経済誌『エコノミスト』が発表している「ビッグマック指数」(2021年7月時点)では、日本は57カ国中31位。主要先進7カ国の中で突出して低いだけでなく、実は、日本だけここ数十年で価格が低迷し続けている。

なぜ日本はビッグマックを安く売れるのかというと、企業努力の賜物というよりも、アルバイト・パートの賃金の安さの影響の方が大きいだろう。つまり、「卵が先か、ニワトリが先か」ではないが、労働者の賃金が安いから外食は安売りができ、外食が安売りするからこそ労働者の賃金が上がらない状況に陥っているのだ。

値上げに対する消費者の反応は厳しい

現に、値上げラッシュがあったとはいえ、日本の消費者の価格に対する要求は厳しい。例えば7月19日からマクドナルドは「都心型価格」の適用を拡大し、一部店舗ではビッグマックの価格を450円から500円に引き上げた。

それに対してもネガディブな反応が少なくない。外食企業の値上げには理解を示しながらも、価格を据え置いている「サイゼリヤ」や「焼肉きんぐ」が大きな支持を集めている現状もある。

一方で消費者側にも日本の賃金が30年にわたって上昇していないという事情がある。一方で、その間、社会保険料は上がり続け、消費税も10%に。労働者の可処分所得が減っているからこそ、外食各社は価格を上げたくても上げることができないのだ。岸田政権下では、国民負担率(実績)が62.8%にのぼるとも言われている。そうした状況下では、飲食店のこれ以上の値上げを容認するのは難しいだろう。

それでは、外食業界の時給の安さと人手不足は解決することができないのかというと、けっしてそういうわけではない。従来の価値観に縛られない方法が求められているが、興味深い取り組みが続々と生まれてきている。

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