飲食店がコストコ並みの時給にできない最大の訳 さらに人手不足に陥る悪循環に陥っている
しかし、家賃は固定費なので、コストの削減は簡単にできない。そこで人件費と原材料費をコントロールする必要があるが、昨今、どちらも高騰しており、従来のビジネスモデルが通用しない状況に追い込まれている。
飲食店がどのくらい物価高の影響を感じているかというと、シンクロ・フードの調査では「とても実感している」と「やや実感している」を合わせて98.1%もの飲食店が物価高騰を感じている状況が明らかとなっている。
値上がりを品目については「電気」「食用油」「ガス」がトップ3を占めている。いずれも日常的に使うものなのでなかなか節約ができず、コスト増としてダイレクトに負担がのしかかっている状況だ。
しかし、原材料費の高騰に対して、飲食店も手をこまねているだけではない。コスト高に対応するため、さまざまな手を打っている。中でも多くの飲食店で行われたのがメニューの値上げだ。
現在起きているFLコストの上昇は、ビジネスモデルを変革させるくらい大きな出来事だとも言える。それは(2)と絡むことで、より深刻さが増す。
生産性を向上させるのが難しい飲食業界
2.生産性の低さ
コストが上昇していても、生産性を向上させることができれば、それを吸収することもできる。しかし、外食業界は生産性を向上させるのが難しい業界だ。そもそも労働集約型産業であるだけでなく、即時性のあるサービスが必要なため在庫が持てない。つまり、暇な時間にあらかじめサービスを作っておき、忙しくなったら提供するということができないため、生産性の向上に限界があるのだ。
こうした外食業界ならではの特徴が、長時間労働につながるだけでなく、利益が出ないビジネス構造となり、アルバイトの賃金も低いままとなってしまう。結果として、それが離職率の高さに結び付き、人手不足の原因になっている側面を持つ。
産出する付加価値が増加し、高い価格で販売できたら、その分、賃金が上がるのはもちろん、積極的な投資を行って、たくさんの労働者を引きつける魅力的な業界づくりもできるだろう。しかし、外食業界の場合、そう単純に事が運ばない。なぜなら価格の問題は(3)の問題と深く関係しているからだ。
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