飲食店がコストコ並みの時給にできない最大の訳 さらに人手不足に陥る悪循環に陥っている
同店は2023年4月19日15時から5月1日10時までの間、人員不足のため休業するという張り紙を掲示し、大きな注目を集めた。同店は東京メトロ丸の内線・西新宿駅のC12出口前にある。通りを一本挟んだ先には、警視庁新宿署や東京医科大学病院もあり、GW中もある程度の集客が見込める立地だ。
それにもかかわらず、アルバイトが集まらないために、休業へ追い込まれてしまった。当時、同店は時給1200~1500円でアルバイトを募集しており、マイナビが7月に発表した「アルバイト募集時の平均時給データ」の関東の平均時給と比べても遜色のない時給で募集をしている。それでも集まらないくらい人手不足は深刻化しているのだ。
非正規社員の人手不足が深刻
実際、帝国データバンクの調査でも、飲食店の人手不足の実態が浮き彫りになっている。パート・アルバイトなどを含む非正社員の業種別では「飲食店」が85.2%で、全業種の中で唯一8割を超えるほど高い。
背景にはパート・アルバイトなどを含む非正社員の就業者全体の7割以上を占めているという飲食店のビジネスモデルが関係している。そもそも飲食店は、利益が出づらいビジネスのため、人件費の高い社員をたくさん雇うのは困難。そこで比較的、時給の安いパート・アルバイトを活用して、営業を行ってきたわけだ。
人手不足を感じているのは外食業界だけではないというのも要因だ。前述のマイナビの調査では、「職種(大分類)別」の時給も発表している。それによると、外食業界の全国時給は1065円となっており、それより下は「販売・接客・サービス」「アパレル・ファッション関連」「エステ・理美容」の3つしかない。多くの調査でアルバイト先を選ぶポイントの1位が「給与の高さ」となっている中、他の職種と人材獲得競争が起きたら、外食業界が選ばれる可能性は低いということだ。
ならば、飲食店も時給を上げればいいのでは、と考える人もいるだろう。しかし、その実現はかなり難しい。外食業界が時給を上げられない背景には、大きく3つの問題がある。
1.FLコストの上昇
現在、外食業界では人件費だけでなく、原材料費の高騰も進んでいる。原材料費(Food)と人件費(Labor)は「FLコスト」と呼ばれ、飲食店を経営する上で重要な指標の1つだ。FLに「家賃(Rent)」を加えたFLRコスト比率を70%に抑えることが利益を確保するために欠かせないといわれている。
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