ニデック永守氏が「敵対的でもほしい」企業の実像 工作機械の買収で狙うのは岡山県の「TAKISAWA」
近年のTAKISAWAは、業績も株主からの評価も決して芳しくなかった。
2022年度は売上高279億円、営業利益11億円、純利益3.3億円。営業から得られた金額を示す営業キャッシュフローは赤字だった。
過去最高益は営業利益だと2006年度の38億円、純利益だと2004年度の26億円。足元の業績はそれらに比べると大きな乖離がある。東証スタンダードに上場している株式の評価をみても、6月時点で時価総額は80億円、PBR(株価純資産倍率)は0.44倍にとどまっていた。
にもかかわらず、ニデックは「同意なきTOB」をしてでもTAKISAWAを必要としている。しかも予定するTOB価格は、1株あたり2600円。TAKISAWAの株価は足元で急騰しているが、2018年5月以来、長らく2000円台をつけていなかっただけにプレミアム(上乗せ幅)は大きい。
ニデックの手中にはない旋盤メーカー
TAKISAWAの旧社名は滝澤鉄工所。創業100周年を迎えた2022年に現社名に変更した。主力製品はCNC旋盤だ。旋盤とは材料を回して削る機械。円柱状の金属を大まかに削って規定通りの直径にする、といった工程で使われる。CNC旋盤はその旋盤をコンピューターによる数値制御で動かす。
TAKISAWAの製品は、主に日系自動車メーカーで使われているようだ。自動車向けでは一般的に、エンジン回りの部品やシャフトといったパワートレイン関連の部品を製造する際、旋盤が使われることが多い。EV(電気自動車)化が進むと、現在のビジネスから転換を迫られる可能性がある。
2022年5月、TAKISAWAは中期経営計画を発表した。そこでは、EV関連に加え、建設機械や農業用機械、半導体製造装置など自動車以外の市場でも売上高を伸ばし、海外に営業拠点を新設すると掲げた。
2024年度の目標は売上高310億円、営業利益25億円と意欲的な数字だ。ただ、自動車領域以外の開拓について、目立った成果はまだ表れていない。
ニデックから見ると、TAKISAWAの買収には、従来持っていなかった旋盤のラインナップを取り込めるというメリットがある。
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