《プロに聞く!人事労務Q&A》震災で事業を縮小しなくてはならず、新入社員に担当させる仕事がありません。新入社員に自宅待機を命じることはできますか?
回答者:社会保険労務士朝比奈事務所 朝比奈睦明所長
【自宅待機命令】
今般の東日本大震災により、多くの企業の事業活動に影響を及ぼしているものと思われます。
事業所の倒壊や生産設備の損壊等の直接的な事情により、事業を縮小せざるを得ない場合、また計画停電の実施や交通事情等の混乱から物資・燃料等の不足、来店者数の減少などといった経済的な事情により事業の縮小を余儀なくされている場合もあります。
大震災によって、事業所が倒壊し、事業の継続が不可能となった場合には、従業員の解雇や採用内定者の取り消しという事態を招くことになりかねませんが、事業の継続が不可能ではないものの、直接的または経済的な事情で事業を縮小せざるを得ない場合には、新入社員に担当させる仕事がないことも考えられます。
ご質問の「自宅待機命令」は、裁判判例などにより業務命令として解釈されており、合理性や必要性を欠いたり、その必要性と労働者の被る事実上の不利益を比較して、その不利益の程度が特段に大きい場合等は業務命令権の濫用として違法となることがあります。しかし、今般の大震災により事業活動に影響が生じ、事業を縮小せざるを得ない場合の自宅待機命令は可能であると判断します。
【休業手当】
自宅待機中は、労働の提供がなされていないため、労働の対価としての賃金を支払う義務はありません。ただし、自宅待機命令の理由が「使用者の責に帰すべき事由」となる場合は、労基法第26条に基づく休業手当を支払う義務が生じます。