「円安一服の先」を大局的に捉えるデータの見方 「経常赤字か黒字か、それが問題」ではない

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その理由の1つを考えるうえで、経常収支に象徴される需給構造の変化を考察する余地はないだろうか、というのが筆者の問題意識である。

経常黒字拡大を受けて、2022年の円安最悪期が終息したかのようにはやし立ててしまうのは、経常黒字か経常赤字かという符号や、黒字水準の増減だけに目を奪われ、経常収支に伴って発生するキャッシュフローの実態に関心を持っていないからである。あまり深く考えていない、とも言える。

着目すべきは「貿易サービス収支」

2022年、経常収支と為替の関係が騒がれたのは、経常赤字という日本経済の歴史に照らせば極めて珍しい事象が起きていたからというのもあるが、「巨大な第1次所得収支(海外投資から得た利子・配当など)の黒字を食ってしまうほど大きな貿易サービス赤字」が歴史的円安の主因だったからだ。経常収支の符号それ自体が本質的に重要だったわけではない。

経常収支と為替の関係を考察するうえで重要になるのは、「実務的にどのようなキャッシュフローが発生しているか」である。

あくまで為替市場への影響を考えれば、アウトライト(売り買いを単独に行う取引)の売買が発生する貿易サービス収支に着目するのが王道である。

なお、サービス収支から漏出する外貨の経路も現在では多岐にわたっており、これも構造変化の一端を示す議論として重要なのだが、それは別の機会に解説したい。

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