「円安一服の先」を大局的に捉えるデータの見方 「経常赤字か黒字か、それが問題」ではない

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具体的には、経常黒字を見て「去年は『悪い円安』と言っていたのに」とか、「去年は『成熟した債権国』としての危うさが話題だったのに」とかといった論調である。こうした論調は極めて表層的と言わざるをえない。国際収支と為替の現状について真摯に向き合っていないともいえる。

確かに、経常収支は赤字よりも黒字のほうが安堵感を覚えるだろうが、名目・実質双方のベースで円安が続き、実質ベースの国内賃金も下落する中、なぜ経常黒字であることにそこまで万能感を覚えられるのか。

経常収支について、黒字か赤字かという「符号」の議論に拘泥してしまうのは、ひとえに経常収支にまつわる実務的なキャッシュフロー(CF)について理解が不足していることが原因だと思われる。

経常黒字でも2022年のドル円は大幅下落

まず、経常収支と相場環境を簡単に見ておきたい。

確かに経常収支は4カ月連続で黒字を記録しているが、7月10日時点で年初来の円相場は対ドルで7.2%、対ユーロで10.5%下落している。言うまでもなくG10(主要先進10カ国)通貨の中で最弱だ。名目実効為替ベースでは2.2%、実質実効為替ベースでは3.3%下落しており、「円全面安」と言って差し支えない。

もっと言えば、2022年通年で経常収支は11.5兆円の黒字だったが、円は対ドルで最大30%以上、通年でも約15%下落している。こうした状況を踏まえる限り、日本の経常黒字が、その符号が示唆する通りの円買い圧力となっていない可能性を疑うのが自然だ。

しかも、2022年11月から足元までの間にFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げが0.75%から0.25%まで縮小され、いったん見送りまで決定される事態に至っているのに、円安は進んでいる。それは多くの識者にとってだいぶ想定と違う展開だったはずだ。

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