富士通で「社内起業家」が成功できた納得理由 「ソーシャルイントラプレナー」の価値とは何か
一橋大学名誉教授・野中郁次郎先生と初めてお会いしたのは2019年のことです。当時、野中先生がある雑誌で連載をされていて、その記事でOntenna(オンテナ)プロジェクトを取り上げていただきました。そのとき、私の所属会社である富士通の時田隆仁社長が、野中先生が立ち上げた「グローバル・ナレッジ・インスティテュート」(GKI:富士通が2000年から続けている次世代リーダー育成を目指した選抜研修プログラム)の卒業生の1人であることを教えていただきました。
時田社長とは、自社イベントなどで少し話をしたことはあったものの、まだオンテナプロジェクトについてきちんと説明したことはありませんでした。そこで、野中先生とお会いした後、時田社長に「オンテナについて説明をさせていただきたいので、その機会をください」という趣旨のメールを直接送りました。すると、時田社長からすぐに返信があり、ミーティングをアレンジしてくれました。オンテナについて説明した後、時田社長から「この話をほかの役員にもしてほしい」と言ってくださり、富士通の経営陣に対してプレゼンを行いました。なお、オンテナプロジェクトの内容は、野中先生の著書 『共感経営 「物語り戦略」で輝く現場』(日本経済新聞出版、2020年)でも紹介していただきました。
こういった関係で、この書籍をつくるに当たり野中先生をお招きし、時田社長と企業におけるソーシャル・イントラプレナーの価値とは何か、何を期待されているのかについてお話を伺うことになりました。
大企業のリソースが使えることを世の中に示す
本多達也氏(以下、本多):私自身、オンテナを事業化できたのは、富士通のビジョンと、私のやりたいことに合致する部分があったからなんです。だから、時田社長も応援してくれて、ここまで来ることができました。所属会社ではありますが、富士通にはとても感謝をしています。その一方で、企業のリソースを活用しながら自分の思いを形にする、私のような事例は日本では少ないですよね。
野中郁次郎氏(以下、野中):少ないね。
本多:オンテナがめちゃくちゃもうかるかといえば、正直そうではなくて……。それでも挑戦させてくれるのは、とてもありがたいです。
野中:大企業には多様な知が蓄積されていますからね。本多さんのオンテナは中小企業では事業化は難しかったはず。僕が初めてオンテナを知ったのは2019年ごろ。すごく面白い取り組みだと感心したのを覚えています。その後、本多さんは富士通の社長である時田さんに会って、取締役会でプレゼンしたんだよね。
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