アメリカの最終エネルギー総消費量が日本よりかなり高いのは、自動車に偏った交通体系になっているため、ガソリンの使用が極端に多いからである。GDP当たりの電気消費量で見れば、アメリカは日本より少ない。これも、製造業の比率が日本より低いことの反映だろう。また、貿易収支も、イギリスと同じように傾向的に赤字だ。
なお、ドイツやイタリアも、GDP当たりの電気消費量は日本より低い。これは、総エネルギー中の電力の比率が日本より低いためだと考えられる。フランスの電力に関する指数が2を超える高い値になっているのは、総エネルギー中の電力の比率が高いためだ。
脱工業化での復興を目指すべきだ
最初に述べたように、製造業が日本国内で事業を行うための条件は悪化したので、復興は生産拠点を海外に移す形で行うことが自然だ。
なおその際、部品生産も海外に移転すれば、TPP(環太平洋経済連携協定)もFTA(自由貿易協定)も必要なくなる(これまでは海外拠点での生産に日本で生産された部品が使われていた。それを日本から持ち込む際、関税を引き下げる必要があったのでTPPやFTAが必要とされたのだ。しかし、部品生産も海外に移せば、その必要もない)。
生産拠点の海外移転は、「電力の制約のために日本から追い出される」とか、「円高になったので日本を捨てて海外に逃避する」というように情緒的にとらえられることが多い。しかし、客観的な経済条件の下での、合理的な経済的選択としてとらえるべきものだ。
これまでも経済的条件は、日本がその方向を取るべきことを要求していた。しかし、内向き志向や外国語が不得意なためにバイアスがかかっていたのだ。日本の製造業の海外生産比率は、欧米諸国に比べてかなり低い。東日本大震災で生じた経済条件の変化は、そうしたバイアスを吹き飛ばしてしまうほど大きなものである。