(第60回)復興への投資は巨大な有効需要か?

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(第60回)復興への投資は巨大な有効需要か?

「阪神大震災は巨大なケインズ政策だった」。これは1995年の『年次経済報告(経済白書)』の見立てである。

白書によれば、毀損されたストックを再建するための復興需要は、被害額(名目GDPの約2%)の復元分だけでなく耐震構造の見直しに伴う新規需要もあるので、2%を超える。だから震災は経済にプラスに働いたという評価だ。

今回もそうした効果があると期待する向きがある。前回紹介した内閣府の試算も、「ストック再建のための投資が経済にプラスの影響」としている。しかし、私は「厳しい供給制約があるため、復興投資は経済を拡大させない」と考える。

その理由を見るために、まずケインズ政策が機能する経済的な条件をおさらいしておこう。ここで想定されるのは、供給能力に十分な余力があるにもかかわらず、需要不足のために生産能力をフルに活用できない状態だ(経済学の教科書では「不完全雇用状態」という)。ここに政府投資のような需要が追加されると、それまで稼働していなかった生産設備が使われて、生産が拡大する。それによって所得を増やした人が消費をすることで、有効需要がさらに拡大する。それがさらに生産を拡大し……というプロセスが発生し、最初の追加需要の数倍の生産拡大が実現する。これが「乗数過程」である。

阪神大震災の場合には、このメカニズムが働く余地があった。被災地域が限定されていたため、生産設備の損傷が大きくなかったからである。

白書は次のように述べている。「マクロの経済指標では、1月は被災地域の減少を中心に全国でも明らかに落ち込みがみられたものの、2月以降はほぼ震災前の水準にまで戻った」「震災地においては生産や消費が落ち込んだものの震災地以外での生産代替が迅速に行われた。そして、余剰設備や余剰倉庫を企業が抱えていたため、物価面へのインフレ圧力も回避された」。

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