夏の電力不足を逃れて、東日本の生産活動の2割が中部電力と関西電力の管内に移ったとすれば、その管内での電力需要は26%増える。そうなると、今度は西日本で電力不足が発生してしまう。つまり、今夏の電力不足は、全国規模の制約なのだ。さらに、原子力発電所の新設は極めて難しいため、電力制約はかなりの長期間にわたり、日本国内での生産の増加を阻害する。
このような供給制約の下では、復興投資は有効需要にはならず、クラウディングアウトを引き起こす可能性が高い。つまり、金利上昇と円高をもたらすと考えられる。
ただし、建設業などの利益は増えるだろう(そうした「特需利益」を吸収して復興支援に充てるため、法人税の付加税が考えられるべきだ)。しかし、それは特定業種で起こることであり、経済全体の所得を拡大させるものではない。
阪神大震災と比べ経済環境が違う
阪神大震災当時と比べると、経済環境が今とは大きく違っている。まず、貯蓄率が高かった。国民経済計算ベースの家計貯蓄率は、96年度には10・4%だった(07年度では1・7%)。また、95年度の国債発行額は、当初予算の12・6兆円から増加して実績は21・2兆円となったものの、公債依存度は28%にとどまった。
したがって、金融市場に圧迫を与えることはなかった。そのため、復興投資がクラウディングアウトを引き起こして金利が上昇するような状況ではなかったのだ。実際、金利は95年春ごろから急激に低下を続けていた。