水商売から「昼職へ転職したい」叶えるガチな現場 面談では「昼職なめんなよ」と怒ることも

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昼jobのオフィス
昼jobのオフィス(撮影:今井康一)

「夜の仕事の不安定さにコロナで気づいた、っていう人が多かったですね。一般企業に勤めていれば、給料日に決まった金額をもらえるけど、ナイトワークはお客さんがつかないと収入がゼロになってしまう。待機中の時給もカットされることが多かったそうなので、収入が不安定ですよね。業態によっては給付金も支払われなかったので、自分の今の立ち位置がどれだけグラグラなのかを知って、昼職に転職したいという人がたくさんいました」

昼jobを取材した2023年3月は、政府がマスク着用の判断を個人にゆだねる、と発表した時期。歌舞伎町もすっかり人出が戻っている。昼jobへ相談に訪れる人、つまりナイトワークから卒業したい人の数も落ち着き、昼の仕事の求人も増えて、コロナ以前の状況に戻りつつあるそうだ。

昼の仕事の経験が一切なかった女性が、トップ営業に

同社の設立は2018年8月。不動産会社で働いていた坪嶋さんが、水商売出身者のポテンシャルを目の当たりにしたことが、創業のきっかけだった。その人は、キャバクラでしか働いたことがない23歳の女性。不動産業界どころか、昼の仕事の経験が一切なかった彼女が、入社1年目で並みいる先輩たちを超える営業成績をたたき出したのだ。すべてがぶっ飛んでいた子でした、と坪嶋さんは振り返る。

「メンタルが異常に強くて、叱られても折れないし、引きずらないんです。しかも、言われたことをきちんと受け入れ、行動を変えることもできる。会社でも、『この子はワンチャン化けるのでは?』と言われていたんです。それで、取締役が直々にその子を見て、基礎をたたき込んでいたのですが、あるミスをやらかしてしまって。ブチ切れた取締役が、『もうお前なんかに教えたくない、ほかの部署に行け!』って怒鳴っちゃったことがあったんです」

取締役はそのまま、会食へ出かけていった。真冬で、雪が降る日だった。深夜近く、取締役がオフィスに戻ると、その彼女が外で震えながら待っていた。そして、自分のことを見捨てないでほしい、明日からもまた教えてほしい、と懇願したのだった。その根性に心を打たれた取締役は、翌日からまた彼女を指導するようになったという。その後、トップ営業に上り詰めたのは前述の通りである。

坪嶋さんはその彼女に、なぜ不動産会社に転職したのかと聞いたところ、「キャバクラのときと同じ給料を稼ぎたいから」と答えたのだそう。昼の仕事に移ったとしても、収入を下げたくない。そのため、インセンティブの高い業種を選び、成績を上げることにとことんコミットしていったのだ。

彼女を見て、ナイトワーカーの可能性を感じた坪嶋さん。最初は自社(不動産会社)の社員の採用のために、「水商売から転職したい方、歓迎」とランディングページをつくったところ、1カ月で100人もの応募があった。面談に来た人のなかで、不動産業界には向かないけれど、他の業種において適材適所で輝きそうな人もたくさんいた。そういった人材を、知り合いの社長に無料で紹介していたところ、すぐに3組ほどが入社につながり、「これはビジネスとしていけるな」と昼jobを立ち上げたのだった。

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