82歳で肺がん「たばこを禁止」にした家族の決断 和田秀樹さんが語る「80歳の壁」を越えてからの生き方

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さらに高齢者は感染リスクや感染後の死亡率も高いとされて、ここ日本では高齢者をマスクどころか家や施設に閉じ込めてしまいました。海外では、高齢者も当たり前のようにマスクを外して自由に行動しています。コロナ感染を怖がって家に閉じこもり、皆がマスクをするからマスクをするのではなく、もっと外へ目を向けてみるべきです。

このように、不安感情は人の行動を制限してしまいます。不安を強く感じすぎると思考がゆがんでしまい、何をするにも縮こまって生活していくこととなり、人生そのものがとても苦しいものになってしまいかねません。

結局はなるようにしかならないのですが、とはいえ残念ながら人は不安感情を完全に払拭することはできません。とくに日本人は先々の不安を感じやすい傾向にあります。

「なるようにしかならない」

がんになったらどうしよう、認知症になったらどうしよう……考え始めたらキリがないほど不安材料が出てくると思います。実際は起こらないか起きてもささいなことがほとんどなのですが、なぜか多くの人が先々の不安を抱えて悩んでしまうのです。

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不安を少しでも解消する方法があるとすれば、実際に起こりえることを予測するのが有効です。人は、自分が知らないことや経験したことがないことで、不安になります。ですから、その不安の正体を突き止めることができれば、不安に振り回されることもなくなるはずです。

がんになるかもと思っている人は、自分ががんになったら、どこの病院でどんな治療を受けるか、認知症になるのが不安なら、介護保険を受給するための準備をするなどです。なるかならないか、誰にもわからないことに不安をもつのではなく、なってしまうことを前提にあらかじめ解決策を用意しておくことで、先々の不安はかなり軽減されることでしょう。

多くの不安を抱える高齢者を診てきたなかで、「なるようにしかならないのだから先々の不安、心配はいらない」というのがわたしの持論です。

そして、これは誰もが知っておいたほうがいいと思いますが、先のことを心配していい対策が見つけられるのならそうすればいいのですが、それが見つけられないなら心配なんてしないほうがいいのです。先のことは、誰にも予想がつきません。予想がつくと思っているのは、人間のおごり高ぶりです。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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