82歳で肺がん「たばこを禁止」にした家族の決断 和田秀樹さんが語る「80歳の壁」を越えてからの生き方

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不安のことでもう一つ、大切な話をしておきましょう。

著名な政治家や会社の社長が、カッとなり暴言を吐いたことで失脚してしまうというニュースを聞くことがよくあります。そのことで多くの人が「簡単に怒ってはいけないんだ」と思ってしまっているかもしれません。ところが、そのようなことは日本では珍しいからニュースになるわけで、怒り感情をあらわにして地位を失う人は、実はそんなに多くありません。

逆に腹が立っているのに、うまく怒ることのできない人のほうが日本人には圧倒的に多いのです。それは、怒りの感情をあらわにして他人から嫌われるのがイヤだからという理由で、正しい感情のコントロールができていないからなのです。

それよりも問題なのは、企業の社長をはじめとする高学歴でかつ出世競争にも勝ち抜いてきた人が、いとも簡単に粉飾決算をしたり、リコール隠しをしたりして、結局のところ刑事罰を受けるような始末となることです。

業績や評判の悪化、株主たちの目を恐れる不安感情から善悪の判断がつかなくなっているからで、わたしのような精神科医の立場から見ると、このように怒りの感情よりも不安感情のコントロールができないほうがよほど怖いといえます。

人の目を気にするから不安にさいなまれる

ここでおもしろいエピソードを紹介しましょう。

以前わたしが出版した『不安に負けない気持ちの整理術』という、不安にまつわる本はあまり売れませんでした。一方で『感情的にならない本』『感情的にならない気持ちの整理術』という本は50万部と30万部のベストセラーになりました。

感情的になってはいけないと思っている人は多いのですが、不安感情のほうがもっと怖いものだと認識している人が少ないということをよくあらわしています。怒りも不安も気持ちをきちんと整理すれば、怒るべきところで怒ることができるし、不安に支配されて判断を誤ることもないのです。

わたしは2022年の秋、日本国内では新型コロナウイルス感染症第7波のただ中にオーストラリアへ行きましたが、そこでは誰もマスクをしていませんでした。日本では、室内でなくても誰もがマスクをしていて、その当時の日本のマスク着用率は85%以上と、世界各国に比べて突出していました。

日本にいると日本人だけが異常だということに誰も気づかないのです。テレビをはじめとするメディアが報道している情報だけでなく、実際に自分の目で見たことのほうがよりリアルな情報として正しいことが多いのです。

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