ハンコに長い会議、なぜこうあっさり復活したのか 「コロナ時代の暫定措置でしょ?」の一言に唖然
「この資料も印刷してくれないか?」
と、突然思いついたように資料の印刷を促す役員もいる。
会議が終わったあと、「ちょっといいかな」と上司に呼び止められることも増えた。
いずれもZoom会議ではなかったことだ。不要なやり取りが多く、電車通勤と同じで疲労がたまる。
何より、本来やるべき仕事に費やす時間がとれないことが、Nさんにとって最もつらいことだった。お客様に向き合って考える時間がとれない。
「1時間だ」と言われたのに、2時間45分も会議が長引いたとき、Nさんは疲労感よりも悔しいという感情を抱いていたようだ。
Nさんだけではない。
「会議の連続で、自分の仕事に取り組む時間がまるで削られているようだ」
「在宅ワークのおかげで、ようやく毎日の長い会議から解放されたのに残念。私のエネルギーは会議の中で消耗していくだけだ」
このように不平を口にする人は多い。
出社に切り替えてから、「いかに長い会議が仕事の生産性を下げているか再確認した」という声もよく聞く。
こうしたハンコの復活や長い会議は、業務の効率化を阻むだけではない。時代の流れに逆行することで、企業の成長を妨げる結果になるのではないか。そういう声が巷であふれかえっている。
よみがえる悪夢「俺の代わりにハンコ押しておいて」
KさんやNさんとは反対に、原則出社を心待ちにしていた人もいる。IT企業の営業Uさん(30代後半)だ。
Uさんの場合、在宅で仕事をしていると、隣の家に住んでいる姑とよく顔を合わせた。
「京都に行った時に買ったお土産を持ってきたんだけど……」
と言いながら家に上がってくることもあった。話すのは5~10分だが、正直なところUさんは煩わしく思っていた。
同期の社員とのコミュニケーションが減ったのも、不満の1つだった。だから原則出社に戻ったときは手放しで喜んだ。
ところがUさんにとって現実は、思ったよりも厳しいものだった。
とくにストレスが溜まるのは、変化に対応できない上司の存在だ。
在宅勤務の間、Uさんは積極的に電子メールやチャット、ビデオ会議を駆使し、フレキシブルに仕事を進めてきた。
とくにオンラインでのお客様対応は、ずいぶんと慣れていた。ところがオフィスに戻ると、
「対面重視」
の方針に切り替わった。渋々電車を乗り継いでお客様のところへ伺うと、
「東京から相模原まで来る必要ある? これまで通りビデオ会議でいいじゃない」
と苦言を呈された。都内のお客様を訪問しても、
「考えが古くない? 御社って」と嫌味を言われる始末。
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