「逆に言うと」を使いこなせない大学生が目立つ訳 やり方だけを教える「暗記教育」を脱するには

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それは、対象が有限個の離散数学などの世界ではとくに背理法がよく用いられることや、「すべて」と「ある」の使い方をよく理解することが大学で学ぶ微分積分や線形代数の理解の重要なカギになること、等々の背景がある(拙著『新体系・大学数学入門の教科書(上下)』(講談社ブルーバックス)参照)。

だからこそ、「(計算問題を主とする)やり方の暗記だけの教育」以外にも目を向けてほしいのである。

しかし現実には相当厳しいものがあって、この種の内容の授業では教える側が「手抜き」をしているケースが少なくない。上述の迷信以外にも、最近明るみになってきた教員の多忙問題がある。これに関連して筆者は、いち早く免許更新講習制度の問題点などを示してきた。

だからといって、理解無視の行きすぎた「(計算問題を主とする)やり方の暗記だけの教育」が横行している現実は真っ先に改善すべきと考える。それが前回記事の趣旨である。

やり方の暗記だけを教える数学教育が広がっている

その記事に対しては多様な意見が筆者のもとに届けられたが、「最近の日本の青少年はチャレンジ精神もないし、知的好奇心も弱い。だからこそ、やり方の暗記だけの教育が蔓延していると思います」という意見がいくつかあった。

実際、「高校生の勉強と生活に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-」(国立青少年教育振興機構 2017年)によると、「授業中、きちんとノートをとる」に関してはトップであるが、「グループワークの時には積極的に参加する」や「授業中、積極的に発言する」に関しては極端に低い。

また、「ウチの生徒にはわからないから、教科書準拠の(計算問題を主とする)ドリルの答えをそのまま覚えさせるか、やり方を暗記させるだけ」という教員が増えていることも、全国で教鞭をとっている教え子たちから聞かされた(教え子の教員は全国で約200人)。

上の問題に関しては「鶏が先か、卵が先か」の面もあるだろう。しかし、チャレンジ精神や知的好奇心というものは、マッチした環境や刺激によって大きく変わるものではないだろうか。

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