「しわ・たるみ」による表情誤解で生じるすれ違い 高齢化で若者とのコミュニケーションが困難に

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先のクイズの答えですが、実は、男性・女性とも真顔です。何の表情も表していません。男性の真顔は、成人を過ぎると、年齢に関係なく、怒っているような印象を与える傾向にあります。そして、加齢に伴うしわやたるみの影響で、その印象がより強くなる可能性があります。しかし、冒頭の男性、怒りを表していません。真顔を保ったままなのです。

冒頭の女性の写真をいろいろな方に見せると、悲しみ表情をしていると思う方が多い。口角が引き下げられると表れるしわが、口角を引き下げていないのにもかかわらず表出しています。また、悲しみに伴い、眉の内側が引き上げられるのですが、この結果生じる上まぶた周辺の特徴が、この女性の顔に刻まれています。ゆえに、真顔でも悲しみ表情と誤読するのだと考えられます。

高齢者の表情を読むのを阻害する原因の2つ目は、表情筋の衰えです。高齢者は、若者に比べ、意図的に表情筋を動かすことが困難であるとわかっています。このことから、高齢者がある表情で特定の気持ちを伝えようとしても上手くいかず、意図しない表情になってしまいます。

しわと表情筋、どちらが問題?

以上のように、しわ・たるみの増加と表情筋の衰えの両方が、それぞれ高齢者の表情を読みとらせにくくしているわけですが、Grondhuisら(2021)の研究より、後者のほうがより大きな影響を及ぼしているということがわかっています。次のような方法です。

実験参加者に、①若者の表情写真、②高齢者の表情写真、③若者を高齢者の顔に見えるように加工した表情写真、④高齢者を若者の顔に見えるように加工した表情写真を見てもらいます。そして、各写真がどんな表情を表しているか、真顔、怒り、恐怖、嫌悪、悲しみの中から選択して答えてもらいます。

なお、若者を高齢者の顔に見えるように加工した表情写真とは、目、眉、まぶた、鼻孔、唇などの形と位置といった表情の特徴はそのままに、肌を高齢者の顔に見えるように加工したもののことで、しわ・たるみが再現された顔になります。

高齢者を若者の顔に見えるように加工した表情写真とは、目、眉、まぶた、鼻孔、唇などの形と位置といった表情の特徴はそのままに、肌を若者の顔に見えるように加工したもののことで、表情筋の衰えが再現された顔になります。

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